いて座
呪術する場を定める
DIY宗教の基礎
今週のいて座は、都市のなかの原始人のごとし。あるいは、人工を通じて、みずからの内なる野生をあぶり出していくような星回り。
文化人類学者のレヴィ=ストロースは『悲しき熱帯』のなかで、ブラジルの都市に触れて、街には西に向かうにつれ発展していくという不思議な傾向があると述べています。
おそらくこれは、東から昇って西に沈む太陽の動きの方向に沿うことが正であり、その逆に向かうことは負であるという無意識的な信仰を人類に植えつけられた、宇宙的リズムの表現の一種でしょう。
ただし、太陽神を国の神話の主神に持つ日本においても、ずっと以前に太陽への崇拝はなりを潜め、少なくとも色彩や効能といった呪術的な性質を方位に結びつけるということはすっかりしなくなっています。
それでも、人々はみずからを大なる宇宙と照応するひとつの宇宙であるという感覚を失うことはないでしょう。もし都市における精密な呪術的機能が異常をきたしてきたならば、それを補うのもまた人類の役割なのではないでしょうか。
呪術という原始人の知恵について、レヴィ=ストロースは「彼らはしばしば、最小の出費で自分たちの知的調和を得るすべを心得ていた」と述べたあと、こう続けています。
「音や匂いが色を持ち、感情に重さがあるように、空間は、それに固有のさまざまな価値を持っている。このような対応の探究は、詩人の遊びでもなければ、ペテンでもない」
都市の中で失われつつある宇宙的調和を前に、まさにこの「対応の探究」をしていくこと。
市井禅ではないですが、そうした試みをしていくことでみずからのスケールを大きく広げていくことが今のあなたのテーマなのだと言えます。
心の中に火を起こす
もし都市の騒音や人工的なノイズで頭の中がいっぱいになってきたら、静かに目をつぶればいい。そうすれば、闇の中にきっと、いろんな音が聞こえてくる。そして、それらの中心を探し、精神の炎を灯すのだ。
「ほら もう夜が背中まできている
火を焚きなさい
お前たちの心残りの遊びをやめて
大昔の心にかえり
火を焚きなさい」
(山尾三省「火を焚きなさい」)
原始人というのは、子供の頃から火起こしの技術を叩きこまれ、ひとりひとりが火を焚く達人でありました。ただ、得てして精神というものをモノ扱いすることに慣れてしまうと、創造的な炎も冷たくなってきてしまうものなのです。
ひるがえってあなたは?
今週のキーワード
レヴィ=ストロース『野生の思考』