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かに座
必要な遅滞
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内に観る
今週のかに座は、ジャコメッティの制作的身体のごとし。あるいは、ひとつの対象が主体と切り離された対象でなくなるまで、じっくりと向きあっていこうとするような星回り。
スイスの彫刻家で絵や版画も残したジャコメッティには、モデルを目の前に立たせてポーズを取らせた際のエピソードとして次のような話があります。
あるとき彼がずっと見ているだけなので、モデルの女性がたまりかねて「アルベルト、なぜあなたはそんなに私を見続けるの?」と言うわけです。それに対して彼は「なぜならまだ見てないからさ」と答えるんですけど、実はポージングさせてからその時すでに6時間も経過していたっていう。
普通に聞けば冗談みたいな話なんですけど、それでは本当に見たことにならないという、制作する側の悩みの吐露として受けとれば、彼は外側にあるものを消費するんじゃなくて、自分の内側にいれて自分が変化していくのを待ってるんだ、ということが分かってくる。
というより、そういう変化のプロセスを止めそうになる自分と向きあって、近代とか常識みたいなリミットを外していくところからでないと、とても制作なんてできないということをジャコメッティくらいになると嫌と言うほど痛感していたのでしょう。
同様に、24日にかに座から数えて「儀式」を意味する6番目のいて座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、そうしたジャコメッティ的なこだわりをもって、何かを制作するということの端緒をつかんでいきたいところです。
霊媒師デカルト
ガリレオやニュートンによる科学的発見などと並行するように、「自分はなぜここにあるのか」と考える事自体が自分が存在する証明であるとして近代の幕開けを飾ったフランスの哲学者ルネ・デカルトは、朝が遅かったことでもよく知られています。
評伝によれば、目が覚めてからもベットの中で考えごとをしたり、書きものをしたりして、11時かそこらまで寝床でぐずぐずしてそうで、しかも毎晩10時間はたっぷりと睡眠を取っていたいたのだとか。
デカルトは手紙に「私の心は眠りのなかで森や庭園や魔法の城をさまよい、想像しうるかぎりのあらゆる快楽を経験する。そして目が覚めると、その夜の夢と白昼夢を混ぜ合わせるのだ」とも書いていたそうですが、優れた頭脳労働をするには怠惰な時間が不可欠だと信じていた彼にとって、午前中のベッドのなかでの黙想は、1日のなかで集中して行われる唯一の知的活動でした。
今週のかに座もまた、インスピレーションを日常へと引き入れ、留めていくための習慣づけを改めて意識していきたいところです。
かに座の今週のキーワード
必要不可欠な怠惰をきちんと確保していくこと
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