おひつじ座
神秘に戻る
いのちがけの静けさ
今週のおひつじ座は、「濁り鮒戻さるるとき静かなり」(戸恒東人)という句のごとし。あるいは、新たな可能性を生み出していく準備に入っていくような星回り。
梅雨のころ、雨で水かさが増して濁った川を産卵のために上流へとのぼっていく鮒(ふな)が「濁り鮒」。
この句は、釣り針にかかった鮒をふたたび川へ戻してやるところでしょうか。そもそも、濁った川で日中釣りをしている人などきょうびめったにいないと思いますが、産卵を控えた鮒たちはしっかりと嗅覚をつかってエサを探しているのです。
「静かなり」という一語には、その言葉とは裏腹にそんな鮒たちの確かな息遣いといのちがけの真剣さが伝わってきます。
同様に、今のあなたも潜在意識や無意識のレベルへと遡っていく中で、改めて新たに夢見ていくことのできるビジョン(=「卵」)を生み出そうとしているのではないでしょうか。
それは、今生きている狭い生存領域を超えていこうとする意志の強化であり、また物事の表層の下で既に進展しつつある伏線が回収されていく物語の始まりでもあるでしょう。
宗教的人間
アインシュタインは『私の世界観』という著書の中で「われわれの経験しうるもっとも美しいものは神秘的なものである。それは真の芸術、真の科学の揺籃となる基本的感情である」と述べ、続けてこう言っている。
「そのことを知らない人、不思議な思いや驚異の念にとらわれないような人は、いわば死んだも同然であり、その眼はものを見る力を失っている、と言わねばならない」
神秘的な経験こそが宗教を生み、そして科学を生んできた訳ですが、掲句の「濁り鮒」における「静か」とはそういう経験に入っていくときの最大の特徴と言っていいでしょう。
このように述べた後、最後に彼はこう結んでいる。
「この意味においては、またこの意味においてのみ、私は深く宗教的人間に属する」
今週のあなたもまた、自分がどれだけ宗教的人間でありうるのかを確かめていくことになるでしょう。
今週のキーワード
不思議と驚異