おひつじ座
より鮮やかな赤へ
私の「くれなゐ」
今週のおひつじ座は、『くれなゐの色を見てゐる寒さかな』(細見綾子)という句のごとし。すなわち、復活や再誕のリアリティを体感的にとらえていくような星回り。
「くれなゐ」とは何なのか。まことに抽象的であり、実際に目の前にある真っ赤な花の色だとも、女性としての自身の本能的なものの隠喩とも、あるいはそれを託した口紅か何かとも取れる一句。
そのいずれが妥当なのかは鑑賞する読者任せではありますが、ここで作者は「くれなゐ」をその対極にあるものとしての「寒さ」にぶつけ、そこで爆発的に生じた思いのたけを「かな」で一気呵成に言い切っています。
そうして浮かび上がってきた究極の寒さによって引きずり出されるように、うちに眠っていたもうひとりの自分や、まだ活かされきっていないエネルギーが躍り出てくるかのようです。
同様に、1月26日におひつじ座から数えて「表出」を意味する5番目のしし座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、みずから積極的に矛盾やブレを取り込んでいくことによって前のめりになっていくことでしょう。
何をその背に感じているか
「相手のために」とか「人の役に立つ」といったことが健全な行為として成立するのは、そういう行為自体が“たまたま”いのち(エロス)の自然な発露であった場合に限られます。先の句であれば、自身の「くれなゐ」を「寒さ」にぶつけたいからただぶつけるのです。
そして、そういう時というのは、相手や周囲からすればこちらの背中に「仏像の光背」のような光がうっすらと差しているように見えていたり、自分でもいつもと比べて視界の明るさを感じていたりするもの。
逆に、少しでも心に魔が差していたり、魔境から抜けきらないままに自分を嘯いていれば、例え細部にまで注意を払っていようとも、それは相手のこころに重くのしかかる荷物となってしまいかねないはず。
おそらく掲句の作者のように、自身の「くれなゐ」を「寒さ」にぶつけるくらい真剣に自身のいのちの使い先を心に決めていくとき、人は愛ということを少しだけ理解するのではないでしょうか。今週のおひつじ座もまた、少しでもそんな彼女にあやかっていきたいところです。
おひつじ座の今週のキーワード
純粋発露