おひつじ座
鈍ったいのちを研ぎ澄ます
肩の力の抜けた決意
今週のおひつじ座は、『もうすこし生きて海鼠と付き合ふか』(小原啄葉)という句のごとし。あるいは、何気ないところに自分の生きる理由を見出していくような星回り。
作者が80歳のときの年の暮れに詠まれた一句。若いうちというのは、何かと理想を打ち出してはまわりの人間がそれをどう捉えるかを気にしていたり、他人と比較して自分は不幸だしあわせだと論じることにどうしても忙しくて、「海鼠(なまこ)」などまともに相手にしようとする人はまずいないでしょう。自分は海鼠より上の存在なのだと、いっぺんだって疑うことすらもなく、その前を通り過ぎている。
それはエネルギーがあり余って空回りしてしまっているか、逆に目の前の現実に対処するのに精一杯で些細なことを気にする余裕がないのだとも言えますが、掲句のような句が詠まれたということは、そうしたことがどちらも少しは落ち着いてきて、ものがよく見えるようになってきたわけです。
考えてみれば、体が不自由になってきたり、あちこち出かけることも減ってきて、家でじっとしている時間が増えてくると、井伏鱒二の『山椒魚』の悲嘆ではないですが、自分も海鼠もそんなに変わらないじゃないかと思うのもごく自然な流れという気もしますし、掲句にはそれくらいの海鼠に対する近しさのようなものが感じられます。
実際、作者はこの句を詠んでから18年も生き永らえ、99歳で亡くなりましたから、ここで軽く促された決意は文字通り身を結んだと見ていいのではないでしょうか。
12月27日におひつじ座から数えて「心の支え」を意味する4番目のかに座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、作者くらいの気軽さで自身に決意を促していくといいでしょう。
「必要最低限」の見直し
例えば、もし大自然の中に身一つで放り出され、助けが来る望みもないとしたら、あなたはどうするでしょうか。
まず、水と食料の確保。次に、火を起こすのに適した場所を見つけ、雨風をしのぎできれば外敵の侵入を防げるような空間をつくっていくことを考える必要があります。実際、野生の動物たちの暮らしぶりを見ていくと、生きて活動しているほとんどの時間をこれらのうち火を起こす以外の作業に費やして日々を送っており、人間だけがインフラや他者の力を借りることで、生きるために必要な最低限の条件をクリアするための時間を大幅に削減できていることが分かります。
一時的にであれ人間も自然の中に身を置くと、そうした生き物としての生き死にの感覚が鋭敏になってきて、逆に普段どれだけそうした本能を鈍磨させてしまっているのかを痛感していくことができるはず。
おそらく、いまのおひつじ座に必要なのも、そうした生き物としての本能的感覚の賦活ということになってくるのではないでしょうか。
おひつじ座の今週のキーワード
自分の生き死にを身近に感じていくこと