おひつじ座
火を絶やすな
自然との闘争の歴史とその行方
今週のおひつじ座は、『信じる勇気大き焚火に柴足して』(矢口晃)という句のごとし。あるいは、自分の中にかつての奮戦の火を再び灯そうとしていくような星回り。
私たちが“文明”と呼んでいるものは自然に対する継続的な闘争によって打ち立てられたものであり、熱心な過去の世代の人びとの蓄積された経験の産物の上に打ち立てられました。
しかし、現代においてもはや人々は“文明”を褒めたたえたり、素朴に信じることができなくなり、むしろ文明に対する罪の意識を競って表明しあったり、白人のリベラル層のように自分たちの存在を大文字(White)ではなく小文字(white)で表記することをよしとしていたりしています。
掲句は、ある意味でそうした現代の社会潮流に反するものと言っていいでしょう。しかし、声高に人類の力を称えようと叫んでいるわけではなく、やっていることと言えば、柴を火にくべて、焚き火が消えずに大きくなるように見守っているだけ。
とはいえ、「大き焚火」とは特別な種類の“火”を暗示しており、それはより偉大な“明日”を打ち立てるため、自然に生きている“いま”を燃やす火であり、未来志向の火なのです。過去の蓄積に根ざしながらも、より偉大で、より力強い文明を生み出せるはずだと「信じる勇気」が、柴を足され大きくなる炎と呼応するように増していく。
それは、このままでは終われないという一種のファイティングスピリット(闘争心)の証しでもあるいように思います。その意味で、12月13日におひつじ座から数えて「哲学」を意味する9番目のいて座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、そんな未来志向の火を大きくしていくことがテーマとなっていくでしょう。
遊歩者の心得
フランス革命を大きく後押しした政治哲学者ジャン=ジャック・ルソーは、最晩年の著作『孤独な散歩者の夢想』の中で次のように書いていました。
わたしが集中できるのは歩いている時だけだ。立ち止まると考えは止まる。わたしの精神は足がともなう時だけ働くようだ
自分の足や手を使って物事を考える代わりにAIやネットの情報を鵜呑みにする傾向がますます強まっている昨今の状況を鑑みれば、こうしたルソーの言葉は、多くの都市生活者に対して警鐘を鳴らすものとして響いてくるのではないでしょうか。
好きなところを歩き回る自由を奪われることは、自分の頭で考える自由を喪失することに他ならず、よくよく自身の言動を振り返ることのできる人であれば、私たちは知らず知らずのうちにみずからこの2つの自由を放棄してしまうことすらあることを知っているはず。
今週のおひつじ座もまた、少なくとも自分だけは周りの人間の自由を奪ったり制限したりするのではなく、むしろその逆の言動をしていけるよう心掛けていきたいところです。
おひつじ座の今週のキーワード
わたしの精神は足がともなう時だけ働く