おひつじ座
魂の静寂を求めて
なくてはならない中心
今週のおひつじ座は、「簡易な生活」の“軸”となるものを整えていくよう。あるいは、「1人でいる時だけしか湧いてこないもの」を研ぎ澄ましていくような星回り。
単独での大西洋無着陸横断飛行を史上初めて達成したことで著名なチャールズ・リンドバーグの妻で、自身も飛行家でもあった文筆家のアン・モロウ・リンドバーグの『海の贈物』は、彼女が一夏を過ごしたフロリダのビーチで取ったいろいろな貝殻からインスピレーションを得て、人生、特に女にとって人生とはどういうものかについて綴ったもの。
たとえば彼女は、50年代のアメリカに住んでいる自分たちが、他のどこの国の人たちにも増して、「簡易な生活と複雑な生活のいずれかを選ぶ贅沢」が許されている一方、多くの人が「簡易な生活を選ぶことができるのにその反対の、複雑な生活を選ぶの」だと述べ、修道僧や尼さんのようにはいかなくても、何日間かでも簡易な生活をするだけでも、どんなに落ち着いた気分になるはずだと言った後で、次のように述べるのです。
我々が一人でいる時というのは、我々の一生のうちで極めて重要な役割を果たすものなのである。或る種の力は、我々が一人でいる時だけしか湧いてこないものであって芸術家は創造するために、文筆家は考えを練るために、音楽家は作曲するために、そして聖者は祈るために一人にならなければいけない。しかし女にとっては、自分というものの本質を見出すために一人になる必要があるので、その時に見出した自分というものが、女のいろいろな複雑な人間的な関係の、なくてはならない中心になるのである。女はチャールズ・モーガンがいう『回転している車の軸が不動であるのと同様に、精神と肉体の活動のうちに不動である魂の静寂』を得なければならない
15日におひつじ座から数えて「美学」を意味する6番目のおとめ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、感情の面だけによりかかるのではなく、みずからの知性の世界を開拓するべく、みずからの生活の中心に据えていくべきものを練り上げていくべし。
ダンテの地獄めぐり
例えば、ダンテの『神曲-地獄篇』では、実際に作者の分身である主人公が、地獄の底で内なる対話を交わしつつ少しずつ手探りで歩を進めていきます。
ひとのいのちの道のなかばで、
正しい道をふみまよい、
はたと気付くと、漆黒の森の中だった。
「道半ば」というのが具体的に何歳くらいのことを指しているのか定かではありませんが、きっと人生は折に触れてそれまでの生き様を振り返りっていく機会が与えられるように出来ているのでしょう。
『神曲』を執筆した当時のダンテは、政治抗争で敗れ故郷フィレンツェを追われた孤立無援状態で、まさにお先真っ暗でしたが、そこで自暴自棄になることなく、おのが半生を振り返りつつ文学史上に不朽の名声を轟かすことになる畢生(ひっせい)の大作の執筆を始めたのですから、人生何がどう転ぶのかは最後まで分からないものです。
今週のおひつじ座もまた、そんな人生の岐路にふと差し掛かっていくかも知れません。くれぐれもそこで腐らず、暗い胸の闇路をとことん辿って、とことんまで余計に入った力の緊張を叩き出してやるくらいのつもりで行くといいでしょう。
おひつじ座の今週のキーワード
六趣輪廻の因縁は、己が愚痴の闇路なり。