おひつじ座
我を離れて見るということ
あっちからやってくるものと出会うために
今週のおひつじ座は、「顕微鏡」という言葉のごとし。あるいは、これまで囚われていた迷妄の外へと自分を投げ込んでいくような星回り。
ここで使われている「微(かすか)」という字は、ものの形や音などがかろうじて認められる程度であるさまや、ほとんど人目につかないさまを表しています。他に、「淡い」とか「ほのか」とか、「うすい」といった言葉も同義的に連想されますが、それらはみな、何かを自分が顕わそうとすることとは反対の意味合いを持っています。
つまり、「顕微鏡」というのは、ないんだけどあるような、あるんだけれどないような様子や状態を見ていくためのものであって、少なくとも自分がこっちから表そうとするようなもの―「俺はこんなに凄いんだ」「私はたくさんの人から必要とされてる」といったナルシシズム的鏡像を見るものではありません。
むしろ、夜空の星と星とのあいだの暗がりを見ている時のように、それまで見えなかった隠れているところから現われて来るもの、あっちからやってくるものと出会ったり、すっと見えてしまったりしていく、すなわち、我を離れたところで何かを経験していく場なのだ言えるのではないでしょうか。
8月31日におひつじ座から数えて「隠れているもの」を意味する12番目のうお座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、本などで知識を身につけたり、資格を取ったりすることで見えてくるのとは真逆の仕方で、かすかな物事の兆候に触れたり、なんとなく察してしまったりする“真実”を感じとっていくことでしょう。
サイコパスとの付き合い方
かつてFBI行動科学課の主任プロファイラーとして数々の事件の解決し、ハヤカワ文庫から1994年に刊行された『FBI心理分析官―異常殺人者たちの素顔に迫る衝撃の手記―』の著者として日本でも一気に名を知られるようになったロバート・K・レスラーという人がいました。
彼はだいぶ変わった人物だったようで、例えばレスラーの弟子で映画『羊たちの沈黙』のクロフォード主任捜査官のモデルとなったジョン・ダグラスであれば、連続殺人鬼と直接面談すれば「おっかないなあ」と普通の人同様に思う訳なんですが、レスラーの場合はそうではない。いっさい動揺しないんですね。そして連続殺人鬼の方でも、レスラー相手だとよくしゃべる。これはどうしてかというと、彼は自分の感情を乗せて人と付き合わないということが突出してできる人だったと言われています。
常人であれば、どうしても内面の話を引き出そうとしたり、自分自身の内面も話したりする中で、ある程度信頼や情で繋がっていこうとするし、だからこそ話が通じなければこっちが悪いんじゃないかと悩んでしまう。その点、連続殺人鬼のような純粋なサイコパスだったり、現代社会で数が増えているいわゆる“欠落的なサイコパス”というのは、とにかく「人を操りたい」「利用してやろう」といった考えが優勢ですから、レスラーほどではなくても、相手の個別性を尊重して入れ込む代わりにパターン認識的に付き合っていく必要がある訳で、こういうことも「我を離れて何かを見る」ということの好例なのではないでしょうか。
その意味で、今週のおひつじ座もまた、どこか抽象絵画や宗教画を見るような感覚で人と付き合ってみるといいかも知れません。
おひつじ座の今週のキーワード
「話せばわかる」という幻想を捨てること