おひつじ座
はねてひらく
転機の一句
今週のおひつじ座は、『炎昼を抜けきて鶏の首はねる』(源鬼彦)という句のごとし。あるいは、葛藤が極まっていくなかで一つのブレイクスルーを果たしていくような星回り。
作者は昭和18年樺太生まれで、掲句は20歳のときの作。当時は日本中が東京オリンピックムード一色で、そうしたムードの中で普及したテレビを通して見た東京の華やかな光景と、自分が住む田舎とのギャップに作者も大いにショックを受け、このまま自分は田舎に埋もれたまま一生を過ごすのだろうか、と焦燥と不安の日々を過ごしていたのでしょう。
そんなある日、鶏の首をはねることになった。それは何度も繰り返されてきた、生活上の何気ない一幕だったにも関わらず、真夏の昼下がりに返り血を浴びて立ちすくむ作者の姿に、読者としてもまさに非常に強い葛藤を受け取らざるを得ないはず。
結局、作者はその後、通信教育を受け始め、田舎を抜け出すための努力を重ねていき、句を詠んだ翌年には札幌に居を移し、郵政局の局員として働く傍ら、俳誌の編集も任されるようになっていきます。その意味で、掲句は間違いなく作者にとって転機となった一句であり、その後の職業人としての人生を大きく展開させることとなった原点でもあるのではないでしょうか。
26日におひつじ座から数えて「息継ぎ」を意味する8番目のさそり座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、今後の人生の展開を支えるためにも、今の自分に払えるだけの犠牲を払っていくべし。
運気の交通開き
私たちには、どこか“外”へ光明を求めていくことによってはじめて“内”にあるものへ目を向け直していくことができるという、実にじれったい特性があります。そして、これを逆さにして言うならば、“内”にあるものを知ろうとするなら、いったん自分を“外”へと連れ出してくれる道を見つけなければならない、ということになります。
例えば、『東海道中膝栗毛』弥次さん喜多さんでも有名な、江戸時代に大流行した「伊勢参り」も当時はそんな道の鉄板だったのでしょう。当時はただの観光目的では旅行は認められていませんでしたから、「寺社への参拝」という表向きの理由が必要だったという事情もありますが、いずれにせよそれは経済的にも精神的にも、一生に一度の大旅行でした。
日常からここではないどこかへ脱出するための旅路につくということは、神秘学でいう「弟子たる準備が整った」ことの証しであり、その旅の途上で光明を開いてくれるような先達や道行きを共にする連れと出会うには、それなりの犠牲が強いられたのです。
今週のおひつじ座もまた、何かを強く求めることと、何かを失うことの表裏一体を、まざまざと認識させられていくことになるかも知れません。
おひつじ座の今週のキーワード
過去の亡霊を置き去りにしていくこと