おひつじ座
変化の過程に坐す
不意に陥ってしまうもの
今週のおひつじ座は、「恋愛をする」と「恋をする」とニュアンスの違いのごとし。あるいは、自分の意志とは無関係なところで、自分の身にふりかかってくるものをきちんと見定めていくような星回り。
恋愛相談で一番困る相談と言えば、相性でも結婚の見込みでもなく、「どうして好きになってしまったんでしょう?」というものでしょう。人を好きになるのはなろうと思ってなれる訳ではありませんし、好きになられるから好きになるという訳でもなく、なぜだか分からないけど不意に陥ってしまうものであり、いわばそうした想定外の状況の最中で何だか判別のつかない感情が、その人を<場>として立ち現れてくるものだから。
これを捉えるには、能動態―受動態ではなく、より自然展開的な中動態と呼ばれる古い用法を頭においておく必要があります。例えば、バンヴェニストという学者はこの中動態について「能動態では、動詞は、主語から出発して主語の外で実行される過程を示す」と前置きした上で「中動態(…)において動詞は、主語が過程の座にあるような過程を示し、主語は過程に対し内的であると述べています。(『一般言語学の諸問題』)
少し難しい言い方ですが、これは能動態の主語が、動詞によって引き起こされる過程に巻き込まれることなく、その外部で元のままであり続けることと対比してみると幾らか分かりやすいはず。
1月23日におひつじ座から数えて「深い実感」を意味する2番目のおうし座で約5カ月間続いた天王星の逆行が終わって順行に戻っていく今週のあなたもまた、能動態とは違って、それによって変わりたい、影響をこうむりたい、という心理を含んだ動詞に身を任せていくべし。
アニミズム的発想
例えば、山形県米沢市には江戸時代に米沢藩のお屋敷が火事で焼失した際、山林の木々を大量に伐採するにあたって、樹木の霊を慰めるために作られた、「草木塔(そうもくとう)」と呼ばれる石碑があります。その背景には、この地域に目に見える形でエゾ文化が存続していたり、木こりたちも「木を切ることは木を殺すことである」という意識を強くもっていたことなどが大きく関係していました。
日本には各地に包丁や眼鏡などの生活必需品を祭るお墓や、家畜の慰霊碑などはたくさんありますが、こうした植物にも動物と同じように心や意識があって、彼らを犠牲にして住む家をつくったり、生きるための燃料にしたりしているのだという物事の見方は、非常に根源的なアニミズム的発想と言えるでしょう。
まず豊かな大地があり、そこから何年も何十年もかけて樹木が育ち、それらを犠牲にしてさらに人間は家を築いて子供を育てていくのであり、したがって切り倒した樹木の霊は、他もでない人間こそが植物霊の世界に送り返さなければならないし、少なくとも古代の日本人の一部は連綿とそうして生きてきたのです。
今週のおひつじ座もまた、普段なら強固に張り巡らせている他者との境界線がゆるまって、自分自身よりもむしろ何か誰かとの繋がりをこそ濃密に感じていけるはず。
おひつじ座の今週のキーワード
相互貫入モード