おひつじ座
たまゆらの一瞬
子どもの頃の躍動感を忘れてはいけないよ
今週のおひつじ座は、『やあといふ朝日へおうと冬の海』(矢島渚男)という句のごとし。あるいは、軽快な動き出しをきめていこうとするような星回り。
「やあ」と「おう」というセリフが、「朝日」と「冬の海」のあいだで呼応しあっている、どこかメルヘンチックな一句。一見すると口語のノリは軽すぎるように感じられるかも知れませんが、夜明け前の寒く厳しい暗がりがじっと変化していく冬景色に漂う、なんとなく重苦しい雰囲気を思いきって払拭してくれているように感じます。
声を出してはいけないような沈黙のなかであえて声を出し、走り出してはいけない空気が支配する中を思わず走り出す。『北風と太陽』の太陽のように、掲句はそんな子どもの頃の躍動感を忘れてはいけないよと、そっと教えてくれているようでもあります。
ともするとお正月や仕事始めはみな妙にゆっくりとしたがったり、気怠さが強調されたりするものですが、新しい年のスタートを切っていくこの時期は、できればこのくらいの軽快なノリで動き出していきたいものです。
1月7日におひつじ座から数えて「根本情調」を意味する4番目のかに座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、年始の動き出しやそのキレ具合で、自身のこれからの1年を占ってみるといいでしょう。
量子的ゆらぎの瞬間
吉本ばななの『キッチン』という小説に、冷蔵庫を開けた瞬間にフッとおばあさんのことを思って、おばあさんが死んだら困るなと、死んだおばあさんのことが何か自分の中に蘇ってくるという一幕があります。
もちろんそれは、冷蔵庫を開けたら現れるとは限らないものであるはずなのに、それが起こってしまう。要は、因果律に合わないことが起きているんですね。
ただ、そういうときに、そばで誰かがそのことを「否定できないこと」だと分かってくれる時がある。「どう思う?」「うん」「そうだよね」「そうでしょ」みたいな。
言わば、ハイパー・コミュニケーションが起きていて、そこで合理的に計算されたものをはるかに凌ぐエネルギーが許されてしまう。それはエネルギー保存の法則を突き破る、たまゆらの一瞬とも言えましょうか。
今週のおひつじ座においても、そうした物理学における「量子的ゆらぎ」というか、恋が芽生える瞬間のような、困惑の悦びを感じていくことができるかも知れません。
おひつじ座の今週のキーワード
「やあ」と「おう」