おひつじ座
日日是好日
がらんどうとしての世界
今週のおひつじ座は、『枯園にライトバン来ぬさぼるため』(榮猿丸)という句のごとし。あるいは、ふーっと深く息を吐いていったん無になっていくような星回り。
東京・神保町に「さぼうる」という喫茶店があって、平日の日中にそこへ行って好きな本や漫画などを読んでいると、ふと10代の頃に学校の屋上でパックの珈琲牛乳を片手に過ごしていた時間を思い出す。掲句の読後感もそれに似ています。
「枯園(かれその)」は冬枯れの公園や庭を意味する冬の季語で、特別見るべきものもない淋しい光景ですが、冬独特のさびさびとした趣きがあります。
さびれた場所にライトバンを停め、シートを倒して一息つくのも、ほんのひと時でも日常から逃れるためですが、木々が鬱蒼と茂っている夏の公園とは違って、冬のそれは格別。
どこか広々として感じられる景色のなかに佇んで、風が冷たく木立をぬけていくのを感じたときほど、この世界が“がらんどう”のように感じられる瞬間はないはず。
24日におひつじ座から数えて「周縁」を意味する9番目のいて座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、崖のへりまでたどり着いた「愚者」にでもなったつもりで過ごしてみるといいでしょう。
東京事変の「閃光少女」
2007年に発表された東京事変の「閃光少女」は、その疾走感あふれるサウンドや特徴的な歌声、そして何より歌詞を通して、ふだん目的と手段の関係にとらわれた日常生活を送っている私たちをまったく別の場所に連れ出してくれます。例えば、
今日現在(いま)が確かなら万事快調よ/明日には全く憶えて居なくたっていいの
今日現在(いま)を最高値で通過して行こうよ/明日まで電池残す考えなんてないの
という箇所では惰性で延長された未来が否定され、
昨日の予想が感度を奪うわ/先回りしないで
昨日の誤解で歪んだ焦点(ピント)は/新しく合わせて
という箇所では現在まで引きずるような過去を否定し、あくまで今日というこの一瞬を「新しく」生きることの必要性が訴えられるのです。ただし、ここでの現在は、あくまで目的のための手段ではなく、役には立たないけれどそれ自体で生き生きと力に満ちている現在であり、そこで確からしく感じられるのは「呼吸が鼓動が大きく聴こえる」一瞬一瞬のなかで、「またとないいのちを/使い切っていく」こと。
今週のおひつじ座もまた、「今日現在(いま)がどんな昨日よりも好調」であるように、悔いなく思いきり一日一日を使い切っていくことを意識してみるといいでしょう。
おひつじ座の今週のキーワード
痙攣に身をゆだねる