おひつじ座
自然に生きていく
押しつけられた生を生かされるのではなく
今週のおひつじ座は、「未亡人泣かぬと記者はまた書くか」(佐々木巽)という句のごとし。あるいは、画一的な価値観への同調圧力に鋭く斬り込んでいくような星回り。
昭和12年11月(1936)に発表された句。この年は二・二六事件が起きた年であり、他にも大規模なクーデターや過激な計画を実行する動きが続発し、軍部や青年将校たちが暴力によって腐敗した政治の改変をはかろうとしていきました。結果的にそれらは失敗し、これ以降、思想行動の監視が強化されていく大きな転機となっていったのです。
その意味で、掲句は当時の新聞の雰囲気を知ることができる貴重な証言とも言えます。犬養毅や高橋是清をはじめ、この年の政変で多くの政治家や軍人たちが犠牲になりましたが、「お国のための尊い犠牲になったことをむしろ喜ぶべし」とする風潮はすでにこの頃から非常に強かったのでしょう。
こうした画一的な価値観への同調圧力が、時代の空気を形成していったのであり、その行き着いた先に待ち受けていたものこそが太平洋戦争への無謀な突入であり、空前絶後の犠牲と深い傷を国民にもたらしたことは、2021年の今のタイミングで改めて想起しておくべきことなのかも知れません。
7月28日におひつじ座から数えて「既存のあり方の相対化」を意味する11番目のみずがめ座に逆行中の木星が戻っていく今週のあなたもまた、自分自身や周囲の旧態依然とした在り様にいかに「NO」を突きつけていけるかがテーマとなっていきそうです。
生きた自然と日常の積み重ね
「整体」という言葉が普及するきっかけをつくった野口晴哉は、自然に生きるとは何もジムに行って運動しオーガニックな食事を心がけることにあるのではなくて、ただ「白い飯を赤き血にして、黄色き糞にしていく」その循環にこそあるのだと言いました。曰く、
生の食べ物を食べても、生水を飲んでも、海で泳いでも、森の中に入ってもそれが自然なのではない。人間という集合動物が街をつくり、その中に住んでいたって決して不自然ではないのだ。ただその生活のうちに生の要求をハッキリ活かすよう生くることが、生くる自然であることだけはハッキリしておかなければならない(『月刊全生』)
つまり、あなたの身の内にある「よりよく生きる要求」すなわち身体の言葉をきちんと聞いて、それを日々の生活習慣の中に反映させていくということ。ただし、そうした自然の言葉は必ずしもこちらの都合のいい言葉とは限らず、実行しようとすればしばしば既存の生活や習慣を捨て去らねばならないことだってあるはずです。
その意味で「既存のあり方の相対化」というのは、何か大げさなことをすればいいという訳ではなく、そうした日常の積み重ねによってこそ遂げられていくものであるということを、今週のおひつじ座はよくよく胸に刻んでいくといいでしょう。
おひつじ座の今週のキーワード
生きる力が抗う力