おひつじ座
アウトサイダーでちょうどいい
こちらは5月24日週の占いです。5月31日週の占いは諸事情により公開を遅らせていただきます。申し訳ございません。
脳ではなく腹に従うべし
今週のおひつじ座は、メスナーの“求道的”登山のごとし。あるいは、身体が潜在的に向かいたい方向へと赴いていこうとするような星回り。
人間は極限状態に置かれると、身体のエネルギーが自然と増大し、日常的には知覚や理性、常識といった枠組みに覆われて意識さえしていなかったものが溢れ出していきます。これは事故や病気などで生死の境ををさまよっているような場合でも起こりますし、断食をはじめとするヨガや修験道の行など、意図的に引き起こしていくことでも可能なのですが、メスナーという人はそれを登山で行ってしまいました。
彼は人類で最初に無酸素で8000メートル級の山を全て制覇した伝説的人物ですが、その著書には極限状況がどんな感覚をもたらし、何が鍵となるのかについて書かれています。
「あの頂上間近で目覚めていたのは私の脳ではなかった。むしろ腹の奥深く、肉体のずっと奥にまだセンシブルな何かがあったのだ。」
「本質的な役割を演じられるのは山の高さではないし、ルートの何度ではさらにない。登山から得られる経験にとって決定的なのは開かれた感性だと私は思う。そして例外的な場合であるが、人間存在の極限的領域に踏み込むことだと思う。」(ラインホルト・メスナー、『死の地帯』)
26日におひつじ座から数えて「物理的・精神的冒険」を意味する9番目のいて座で皆既月食を迎えていく今週のあなたもまた、メスナーにならって「開かれた感性」をもってここぞというところで「踏み込むこと」を選択していきたいところです。
無意味を超えて
コリン・ウィルソンは『アウトサイダー』の中で、ニーチェやカミュ、ヘッセなど様々な人物や作品を例にとりつつ「アウトサイダー」の仕事について次のように語っていました。
「自分がもっとも自分となるような、つまり最大限に自己を表現できるような行動方式を見いだすのが「アウトサイダー」の仕事である。(中略)「アウトサイダー」は、たまたま自分が幸運に恵まれているから世界を肯定するのではなく、あくまでも自分の「意思」による肯定をしたいと願う。」
この本の主題は、「私たちはなぜ日常に倦怠してしまうのか?」という一点の疑問に集約することができますが、これは「現代人はなぜ飲酒やドラッグ、いじめや不倫をやめられないのか?」という問いと置き換えることもできるはず。
日常が退屈だから。そう答える他ないところを、著者は「(自分には)才能もなく、達成すべき使命もなく、これと言って伝えるべき感情もない。わたしは何も所有せず、何者にも値しない。が、それでもなお、なんらかの償いをわたしは欲する」のだと述べています。
これは本当にその通りで、みんな人生という不可解なものの内では結局何も所有することができないからこそ、何か可能なものを成就せんとして、醒めながら手を動かすのかも知れません。
今週のおひつじ座もまた、怠惰に陥るのでもなく、機械に任せるのでもなく、自分の潜在的なエネルギーを最大限に引き出していくべく、相応のハードルを課してみるといいでしょう。
今週のキーワード
みずからの運命を必死に手繰り寄せること