おひつじ座
文体練習
こちらは4月12日週の占いです。4月19日週の占いは諸事情により公開を遅らせていただきます。申し訳ございません。
「ふと…」を味わう
今週のおひつじ座は、高野文子の「バスで4時に」という漫画作品のごとし。あるいは、「ふと…」した日常の新たな価値を実感していくような星回り。
この作品はただ単にバスでどこかへ行くという話で、その中に主人公の女性がバスの席に座っているところから始まる見開き2ページがあります。自分の目の前にシュークリームの箱があり、その中に8個入っていることを思い出した上で、「あちらが3人、あたし入れて4人。後から遅れてもうひとり、3つあまる…」などと計算していきます。
そして、不意に前の座席の下のボルトを見る。ボルトを見ていると、連想が働いて「まわすのに どれくらいの 力が入るんだろう」と次第にねじ回しのイメージにズームアップしていき、このへんから発想が飛んでいきます。なぜか、油さしがあって、何だか分からないでっかい機械がガッタンガッタン動いているイメージになり、この機械が下から「ゴー」という音を立てて上がってきます。で、じつはこれはファスナーで、それを上まであげて襟を折る、というところで見開きが終わるのです。
ふつう、こんなことをわざわざ作品にしようとは思いませんよね。そもそも、こういうことを日常で経験しても、大抵はすぐに忘れてしまいます。けれど、彼女はふとした瞬間に、自分の想念がぜんぜん脈絡なく運んでいくイメージとか、その時間経過についてこれだけのコマと手間を使って描いている。それは、とても豊かで創造的なことなのではないでしょうか。
12日に他ならぬおひつじ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、そんな風にふとした瑣末な日常の瞬間にこそ、もっとも味わうべき価値があるのだということをみずから示していくことがテーマとなっていくでしょう。
訪れを拾っていく
「自動筆記」というものをご存知でしょうか。いわゆるチャネリング手法の一つで、あたかも何か別の存在に憑依され、自分を支配されているかのように、意識とは無関係に何かを書き出してしまう現象を言います。
とはいえ、自動筆記やチャネリングなど、大げさな言い回しなどしなくても、私たちは日頃から少なからずこうした体験をしているのであり、高野文子さんもそれに気付いて、自身の創作に取り入れていたのではないでしょうか。
それは聞き間違いや、雑踏でなんとなく耳に入った言葉、不意に口から出た一言だったり、なんとなく足が向いた路地や、なぜか立ち寄ってしまったお店など、じつにさまざまな形で私たちの体に降りてくるもの。ただそのことに気付くには、いわば「意識的無意識」というニュートラルな意識状態を、意図的に作り出せるかどうかが問われていきます。
開かれつつ、待っていること。我慢強く。緩急をつけて。そして、捕まえた途端に記録してみること。この一連の流れを、今週はどうか大切にされてみてください。
今週のキーワード
「意識的無意識」で生きる