おひつじ座
うそもまことなりけり
狐火幻影
今週のおひつじ座は、「わが身より狐火の立ちのぼるとは」(藺草慶子)という句のごとし。あるいは、秘めてきた思いがふつふつと湧き上がってくるような星回り。
「狐火(きつねび)」とは、夜に山谷や墓地などで青白く浮かび上がる燐光のこと。その原因については、狐が口から吐いたのだとか、狐同士で尾を打ち合わせて起こすのだとか、諸説ありますが、意外にも沖縄以外の日本全域で見られた現象として昔から知られてきました。
掲句は、身の内の激しく、秘められたエロスが狐火に化身する瞬間を詠んだもの。もとがどろどろした情欲であれ、黒々とした怒りであれ、闇夜のなかを妖しく光っている燐光は不思議な恐ろしさをたたえつつも、どこか胸を打つ美しさを感じさせます。
おそらく、近代以前にはそうしてひとり狐火を吐いたり、はたまた、日中には表に出せない情念を燃え上がらせて狐火を起こしていた二人がそこかしこにいたのではないでしょうか。少なくとも、人間以外のものになる敷居は今よりずっと低かったはず。
15日におひつじ座から数えて「境界線の外」を意味する9番目のいて座で今年最後の新月を迎えていくあなたもまた、これまでどこか超えられずにいた一線を超えていく情熱と渇望とを改めて燃え上がらせていくことになるでしょう。
真事と真言
例えば私たち全員の中にも、残忍さだとか、ずる賢いものだとか、世間の普通の枠には収まりきらなかったものが潜んでいる訳で、そう考えるほどに「〇〇はよい人だけれど、△△はわるい人だ」とは安易には言えなくなっていくはずですが、ましてや自分に関しては特にそうでしょう。
でもだからこそ、ひとりでは矛盾や欠陥をもったパズルの1ピースのごとき個人として在らざるを得ない私たちは、自分にぴったりハマる関係を求め、あるいは不完全な関係性の中に<まこと>を立てていこうとするのかも知れません。
<まこと>は漢字で「真事」とも書けます。例えば、孤独ということも、誰しもが避けては通れないという点で<まこと>でしょうし、一方で宇宙と自分とが調和してなんだか不思議な偶然が続くのも<まこと>でしょう。
<まこと>には、かならず運命感覚とも呼ぶべき、なんというか「こうあるべくしてそうなった」必然性への直観がついて回るのです。
もちろん、客観的な裏付けなどはありません。けれど、深い直観に紐づいた言葉というのはやはり「真言」であり、その響きはおそらくあなただけでなく関係を結んだ相手にも調和を与えていくはず。今週はできるだけ自分の直観を信じて、<まこと>の関係を感じていきたいところです。
今週のキーワード
必然性への直観