おひつじ座
美しく生き延びる
男らしさ/女らしさを超えて
今週のおひつじ座は、「男女がタクシーに乗り込む」光景のごとし。あるいは、自己の中に二人の男女が内在し、両性具有的になっていくような星回り。
女性は女性らしく振る舞い、男性は男性らしく行動するのがよいことで、それ以上にそうでないことは異常なことでさえあるのだ、というジェンダー観は2020年も暮れかかっている現在においても、いまだ根強く人々の意識の深層に横たわっているように思われますが、19世紀末から20世紀前半を生きた作家のヴァージニア・ウルフにとってそれはより一層耐えがたいものだったはずです。
ウルフは多くの女性たちにとって重要なのは、自立するという「男らしさ」を捨てずに、負の「男らしさ」を抑圧することだと考えていましたが、女性であっても自らの考えを持ってそれを言語化でき、反対に男性であっても女性の想像世界に入っていくことができるという両性具有的な能力を、次のような光景に喩えていました。
男女がタクシーに乗り込むのを見たとき、分割されていた心がまた自然と融合した、とはっきり感じたのです。そう感じた明白な理由は、両性が協力し合うのが自然なことだからでしょう。男女の調和から最大の満足が得られる、もっとも完璧な幸福が生まれるという説に、わたしの本能は深いところで―理屈はつかないとしても―賛同しています。(『自分ひとりの部屋』)
この「タクシー」は決して男性がハンドルを握っているのでも、乗り降りの決定を一方的に下しているのでもなく、あくまで男女は左右のドアから平等に出入りでき、座席では協力のための会話がごく自然なトーンでなされているのかも知れません。
8日におひつじ座から数えて「自律と自立」を意味する6番目のおとめ座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、みずからの無意識的な考えに改めて気付き、それを解きほぐしていくことがテーマとなっているのだと言えるでしょう。
地衣類の生存戦略
地衣類は既知のものだけでも1万5000種以上もあり、それらは自立した生物学的存在ではなく、二種の異なる植物から成っています。ひとつは自ら光合成で食べ物を作る小さな海藻の類で、もうひとつは他の有機体に依存して生きる菌類。
このふたつが一緒になって、どちらの類とも外見上も生物史の上でも異なる第三の生物として、いずれも単独では生存できないような過酷な環境(灼熱の砂漠や山頂の残雪、真空状態など)に適応しているのです。
まさに奇跡のような驚くべき存在な訳で、特に藻類の方は単独でも生きられ、今でもそうしているものもいるということを考えると一見不可解な話ですが、菌類と一緒にいることで藻類の方も乾燥や損傷や電磁波や放射線などの脅威を免れることができるという恩恵を受け取っていることも事実で、やはりこの強力なタッグなしには地衣類は自然界で現在のような多様な展開をすることはできなかったはずです。
そして、まさにそうした地衣類のごとく、既存の生息域を大きく超え出て、多様な展開へと乗り出していこうとしているおひつじ座の人たちにとっても、自分で自分の食い扶持を稼ぐだけに留まらない彼らのような在り方は、今大いに参考になっていくはずです。
今週のキーワード
共生とは互いにケアしあえること