おひつじ座
休息を据える
プラネタリウムにおける音楽の効用
今週のおひつじ座は、野尻抱影の随筆「プラネタリウム」の一文のごとし。あるいは、世渡りと慰めとのバランスをとっていくような星回り。
昭和31年に出版された星の大家・野尻抱影の『星三百六十五夜』のあとがきには、「終戦の秋のやりどころのない感情をようやく星にむけて夜・昼かきつづけた随筆」と書かれており、実際本書の「プラネタリウム」という項では、「戦争で破壊された前の毎日天文館のプラネタリウムの……解説者の一人の秋元君―惜しむらくも亡くなった―が音楽院出身で、毎回いろいろのレコードをかけていた」と回想しつつ、複雑な心境を綴っています。
静かな音楽の間の太陽が(地平の風景を描いた)シルエットの蔭に沈むと、しばらく西は『水いろの薄明』で宵の明星が、時に水星も低くもにじんでいるが、それも暮れてドームの天井は燦然たる星空となる。この瞬間はいつも声をあげたい程の美しさだった
東京・有楽町で開館した東日本初のプラネタリウムであった毎日天文館。営業期間はおよそ8年とごく短期間でしたが、当時の混迷を深めつつある世相の中で人々に一筋の光明を与え、南方戦線へ赴く兵士の教育の一環として、軍関係の観覧もあったのだとか。文章にもどると、プラネタリウムの上映が終盤に入ったシーンについてこう記されています。
やや疲れて眠気もさして来たころ、星空がようやく白んで流星がほろりほろりと流れ、ツィゴイネルワイゼンのメロディーが次第に現実の世界へ連れ戻していく。あの夜明け前の感じは無類である
17日におひつじ座から数えて「現実と夢想のはざま」を意味する6番目のおとめ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、自分が真に必要としている慰めを明確に思い描き、実際にそれをみずからに提供していく契機にしていきたいところです。
あえて隙をつくっていくこと
武道の世界ではよく「隙をつく」などと言いますが、吐く息と吸う息のあいだというのは、意識のコントロールがきかず、その一瞬だけまったくの無防備となるため、戦いにおいてはできるだけこの呼吸の隙を小さくしていかねばなりません。
ただ、そうして息を殺し、あるいは息をつめていると、つねに身構えっぱなしの状態となっていきます。さらに、その状態にだんだん疲れてくると、今度は呼吸から弾力が失われ、いざという時の集中力が落ちたり、あるいは力の抜き方もすっかり下手になってしまう。
人は大人になると、どうしても赤ちゃんのように無防備ではいられなくなってしまう訳ですが、今週のあなたは、どこかで失ってしまった隙をもういちど取り戻そうとしているのかも知れません。
硬い背骨を一度バラバラにして、呼吸の「呼」と「吸」のあいだがゆったりと広がっていくさまをイメージしていくといいでしょう。
今週のキーワード
「呼」と「吸」のあいだを拡げる