おひつじ座
遊戯と求愛
椿市の歌垣
今週のおひつじ座は、万葉集に詠まれた「海石榴市の八十の衢(やそのちまた)」のごとし。あるいは、熟慮することと求愛することとを同じくらい大切にしていくような星回り。
「海石榴市(つばいち)」とは、奈良の三輪山の南西に所在して開かれた交易市のことで、日本書紀や万葉集にも何度も登場し、古代の市としては最もよく知られたものと言えます。
その名の通り、当時椿(つばき)の実から採る油は食用、化粧用など広く珍重されて交易の中心となっており、市が立つからには諸方から訪れた男女がそこで出会い、歌垣(うたがき)すなわちお互いに求愛の歌謡を掛け合う呪術的な習俗の場所としても聞こえていました。
多くの人々が歌を詠み、心を通わせ、愛しあったその地が、他ならぬ椿市であったのはいかにもゆかりのあること。早春から晩春まで火の紅の花を咲かせ続ける常緑樹である椿は聖樹、ご神木のたぐいであり、古代人は畏れをもってそれを眺めたのでしょう。
と同時に、彼らはただ何かを眺めていたのでなく、そこにおのれの思いをのせて、椿油に火を灯すように、情念の炎を燃やしていったのだということを、われわれは思い出していかねばなりません。
生きるとは、まず第一に出会うことであり、そこでどれだけ命の炎を燃やしていけるかなのではないでしょうか。
新たなサイクルの始まりの節目である「立春」を迎えていく今週のおひつじ座もまた、どこでなら自身の炎を大きくしていくことができるか、いま一度思い返してみるといいかも知れません。
遊びを取り入れる
古代世界において、市は人が集うばかりでなく、言霊や精霊が遊ぶ非日常的空間でもありました。翻っていまの日本人は、“がんばる”ことは得意ですが、一方で“力を抜くこと”はとても下手になってしまいました。
そして、上手に力を抜いていくことこそ、遊びにおける要であり、今のおひつじ座にとっても最も重要な課題なのだとも言えるでしょう。
もし、考えや気持ちがこんがらがっているのなら、コラージュ、積み木、ボール遊び、お絵かき、乗り物など、なんでもいいので、まずは副交感神経をリラックスさせていくプロセスを優先していくといいでしょう。
今週のキーワード
無心であること