おひつじ座
猫の在り方に近づいていけ
「言ってくれるじゃないの」の強弱
今週のおひつじ座は、「愛人でいいのとうたう歌手がいて言ってくれるじゃないのと思う」という俵万智の歌のごとし。あるいは、それとなく等身大の自分を象っていくような星回り。
「歌手」とは1985年にリリースされた「愛人」を歌うテレサ・テンのこと。
普通の表現者であれば「言ってくれるじゃないの」という言葉にのっている感情が、対象である「歌手」より「自分のほうが上だ」という意識を前提に起こっているのが透けて見えてしまうものですが、作者の場合、それがまったくの同等として意識しているようにしか感じられません。
もし同等でなかったとしたら、作者はこの「歌手」に触れなかったであろうし、それがこの歌人の特異な才能でもあるのでしょう。
テレビの向こう側とこちら側の差異を、そんなふうにひょいと超えて、何てことないように対置させる手つきの、なんて自然なことか。
12日(木)におひつじ座から数えて「生き生きとした交流」を意味する3番目のふたご座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、できうる限り自然な手つきを通して、身の内の生命力やその意外な力強さに思い至っていくことになりそうです。
泥棒猫の足どりで
夏目漱石は『吾輩は猫である』において、「のんきと見える人々も、心の底をたたいてみると、どこか悲しい音がする」と書いていましたが、例えそうだとしても、ほとんどの人は自分の出している心の音に無自覚なものです。
さらに言えば、一体それがどこから鳴っているのか、という話になるともうほとんどお手上げでしょう。
ただ一方で、誰かに心から寄り添っていこうとするとき、人は自然と相手の悲しい音の出所を敏感に感じ取っていきます。
その際もちろん、大きな音を立てて近寄っていけばつかめませんから、抜き足差し足忍び足でそっと近くまでいって、何度か通り過ぎて、ああ、ここだったのか、とやっと察知することができる。
だから「泥棒猫」と言うように、猫は泥棒の鑑であって、家のどこに大事なものがしまってあるか、自分のどこから悲しい音がしているのか、見抜いていながら、分かっていながらも普段知らんぷりしている訳です。
あなたもひとつそんな猫になったつもりで、内から外から、そっと自分の出している音に忍び寄っていきたいところ。くれぐれも、余計なものをくっつけず、軽やかな足どりで日々に臨んでいくべし。
今週のキーワード
ネコを讃えよ