おひつじ座
火は消えず、燃え続ける
言葉のかがり火
今週のおひつじ座は、山尾三省の「火を焚きなさい」という詩のごとし。すなわち、自分が心から必要としているものを、世界に向かって示していくような星回り。
アメリカでヒッピー・カルチャーが花開き、平和主義訴えていた60年代後半から70年代半ばにかけて、日本でもスピリチュアルな旅とシンプルな生活を求める若者たちを中心に、<部族>という日本で一番知られたコミューン運動がありました。
その中心人物の1人であり、部族解散後に屋久島に永住したのが詩人の山尾三省でした。
彼がかつて夢見たユートピアは時代の流れとともに潰えてしまいましたが、その志が託された詩は今なお残り、多くの人に影響を与え続けています。
「子供達よ
ほら もう夜が背中まできている
火を焚きなさい
お前達の心残りの遊びをやめて 大昔の心にかえり
火を焚きなさい
(中略)
人間は
火を焚く動物だった
だから 火を焚くことができれば それでもう人間なんだ
火を焚きなさい
人間の原初の火を焚きなさい」
屋久島での暮らしにおいて、薪を燃やすことは欠かせない営みだったそうですが、山尾がこの詩にこめた思いは、どこか今のおひつじ座にも相通じているように思います。
29日(日)におひつじ座から数えて「自分の弱さを補完してくれるもの」を意味する7番目のてんびん座で新月を迎えていく今週は、社会性を獲得する以前にあなたの中に灯った原初的な感情や衝動を改めて思い出していくことになりそうです。
自由と憤怒
17世紀初頭の現在のチェコ西部にあたるボヘミアの山奥で生まれた1人の靴職人が、しばしのあいだ霊感に打たれ、自然の内奥に潜む神秘をその眼で垣間見たという。
そのわずか15分間に過ぎない体験がもとになって書かれた手記が、後世、神秘主義に関心をもつ世界中の人々に多大なるインパクトを与えたのだから、この世界の、そして人間の可能性というのはやはり分からないものです。
男の名はヤーコブ・ベーメ。ヘーゲルは彼のことを「ドイツの最初の哲学者」とまで呼んでいます。
ベーメの言葉は非常に荒削りでありながら、奈落の底からこの世を見上げていくような、原初的な想像力に満ちていました。例えば、
「火は自然の中心にあって、点火される以前には闇の世界をもたらすが、点火されると、それ自身が光の世界になる。」
ここでは、「火」が人間に自由と憤怒という相反するものをもたらす「業(カルマ)」のようなものとして表わされているのですが、それは先ほどの山尾の詩にもどこか通じるものがあるように思います。
今週はたとえ荒削りでも、ぱっと心に灯ってくるものを追っていくといいでしょう。
今週のキーワード
奈落の底に火は灯る