おひつじ座
意識と気配の追いかけっこ
蝶を追う人
今週のおひつじ座は、ちょうどいいタイミングでぱっと後ろを振り返る「ブタヤマさん」のごとし。あるいは、意識に追いついてくる気配を拾いあげていくような星回り。
長新太さんの絵本に『ブタヤマさんたら ブタヤマさん』(文研出版、1986)という絵本があります。ブタヤマさんは蝶をとるのに夢中で、つねに前しか見ていないので、後ろから何が来ても分かりません。
そうすると、「ひゅーどろどろ、ブタヤマさんたらブタヤマさん、後ろ見てよ」とツッコミが入って、なんだか巨大なすごいやつが絵本に出てきていたりするんですね。けれど、ブタヤマさんは蝶ばかり気にして気付かない。
そんなことが何度か繰り返されて、とうとうブタヤマさんが「何、どうしたの、何か御用」と言って後ろを振り返ると、そこだけ白紙になっている。ただそよそよと風が吹いているだけなので、ブタヤマさんにまたすぐに前を向いてしまう。
こういうところなんか本当に絶妙な表現だなと思うんですが、蝶というのはギリシャ語でプシュケーと言って、魂のことでもあるんです。それを踏まえて見ると、ブタヤマさんは何者かになろうとがむしゃらに「自己実現」に向けて頑張っているおひつじ座そのものという風に思えてくる。
14日(土)におひつじ座から数えて「自分を含めた全体」や「見失いがちなもの」を意味する12番目のうお座で満月を迎えていく今週は、おひつじ座にとって、自分もどこかでそんなブタヤマさんと同じようなことをしているなと気付けるかどうかが、分かれ道になってくるはずです。
ちょうどいい時に気配をさとる
感性だけが先行し、あるいはひたすら行動あるのみで、なぜそうしたのかを人にすべて説明する必要などない。と、おひつじ座の人ならば(特に若い頃は)思いがちかもしれない。それも一理ある。
だって、後から振り返ったときに、ああしておいてよかったと心から思えるのは、できそうもないことをやってみた時とか、みんなに呆れられつつも好きなことをやり通してみた時だったりするから。
つまり、常識や理性に絡めとられる前に、身体ごと前のめりで行動できた時なのだ。
けれど、長く生きたり、やってみたいことのスケールが大きくなるにつれ、ただそうした前のめり行動の一本やりでは貫き通せない壁というものが必ず出てくる。
そんな時、前ばかり見ていたり、後ろに何もなかったタイミングの記憶でどうせ何もありませんと言うのではなくて、「背後の気配をさとる」ことができたとき、はじめて心全体で何かが出来上がってくる感覚を掴んで、壁や危機を乗り越えることができたりする。
今週のあなたもまた、そんなステップをはきっと踏んでいくことができるのではないか。そんな風に感じました。
今週のキーワード
「ひゅーどろどろ、ブタヤマさんたらブタヤマさん、後ろ見てよ」