おひつじ座
光を見るとき
ファーブルに差した「知的な微光」
今週のおひつじ座は、夜道でやっと見つけた屋台の灯りのごとし。あるいは、これから先「わが道」を歩いていく上で必要な「光」を求めていくような星回り。
ファーブルの『昆虫記』と言えば、今日知らない人はいないほど多くの人の関心を集めており、昆虫の生態をつぶさに観察した文庫版にして4000ページを超すこの著作は、生き物を考える原点とも言える人類の資産となっています。
しかし彼の生涯は決して順風満帆ではなく、進化論を認めず、正規の学者へのコースをたどらなかった彼の業績は、当時ほとんど正当な評価は受けられませんでした。
そんな活動の原点について、「最初の知的な微光が目覚めたのは、ある日、幼い私が両手を後ろにし、太陽の方を向いて考えていた」ときであると述べた後に、次のように続けています。
「私は灯火の明るさに惹きつけられる蛾であった。私が輝く栄光を口で見ているのか、あるいは眼で見ているのか」と。そして目と口を交互に閉じた後で、「私は私が眼で太陽を見るということを的確に知ったのだ」と結んでいる。
一見バカげた問いにも見えますが、こうした根本的な問いから出発し、その気になればいつでも初志に立ち返ることができたことが彼の最大の強みであり、また憩いの場にもなっていたのではないでしょうか。
今週のあなたもまた、彼のように初志に立ち返り、かつて自分に差し込み、今もまた自分を照らしてくれている精神の灯火に自然と惹きつけられていくことになりそうです。
触覚の効用
私たちは日頃、見える部位や触れられる部分、お腹の音や、痒み、尿意や筋肉痛、むくみやむかつきなど、じつに断片的な知覚データをなんとかひとつにまとめて「自分の身体」としてまとめ上げている訳ですが、ファーブルにおける「知的な微光が差した」経験というのは、そうした「まとめ上げ」に関わっているのだとも言えます。
あるいは、多くの材料からひとつの衣服を作りあげるように、いろんな風景や記憶を、手つきや身振り、動作に変換していくことで、自然とこれまでとは異なる生き方や生活にパッと導かれていく瞬間というのも、それに近いかもしれません。
一説には、これは「触覚」を刺激することで脳の中の「橋脳(きょうのう)」と呼ばれる部分が刺激されるからとも言われています。橋脳は、感覚が入力される場所で、視野を広げて物事を視覚化していく情報処理機能と言えますが、橋脳が活性化していくことで未来への展望も開けやすくなっていくのです。
そんな風に、今週は自分の断片的な経験や記憶をまとめ上げていくためのあれやこれやに奔走していくことが、ひとつの大きなテーマとなっていくでしょう。
今週のキーワード
閃光的橋脳体験