おひつじ座
自覚のための儀式
新天地にて
今週のおひつじ座は「地の涯(はて)に倖せありと来しが雪」(細谷源二)という句のごとし。あるいは、この先の未来には何が潜んでいるのだろうかと、新天地に問いかけていくような星回り。
作者は1941年の新興俳句弾圧事件で逮捕され、2年間投獄された後、東京からの開拓移民団の一員として家族をつれて北海道の十勝に渡りました。
この句はその際に詠まれた句で、ここにこそ幸せがあると信じて渡ってきた作者や家族の胸の内と、北の原野の冬の厳しさの対比が痛切なまでに迫ってくるようです。
昔から冬の季語「雪」は「豊年の瑞兆」として農耕とも関連付けられ、その年の雪の降り方で豊作か凶作かを占ったといわれていますが、ここでは作者や一家の「倖せ(しあわせ)」がこの句の最後に置かれた「雪」の一語に託されているのだと言えます。
果たしてこの賭けが、吉と出るか凶と出るか、それはやってみなければ分からない。それこそ、やるべきことは文字通り山積みだったのですから。
今のあなたもまた、そんな作者のように、期待と不安の入り混じった心境の中にいるのではないでしょうか。
この際、失敗だとか成功だとかは脇においておきましょう。自分は何者であり、何ができるのか、その真価が問われていく時です。
意識は後から追いついてくる
歴史的事実のみ書いておけば、作者はその後、北海道での開拓生活に失敗します。それでも、渡北から8年後の1949年に結社誌「氷原帯」を創刊し、1970年に亡くなるまで主宰しています。
人生の「わかれ道」を通るためには、人は何かを選ばなければなりません。
ただ、結局はそれも「自分が選択したのはここだったのか」と後から意識が追いつくことになる訳で、本当のところは最初からそんな予感がしていたのだと思います。
天から降りてくる未来の“兆し”は、それを問うものの胸の内に深く沈んでいた願いと呼応しているのであり、占いという文脈においてそれが確認されていくだけのことなのでしょう。
未来を予測していたずらに心を掻き立てるのではなく、深く納得するための事後確認として事実を見つめ、みずからの胸の内の結論へ帰納する。
そういうことへ、今週は自然と通じていきそうです。
今週のキーワード
「氷原帯」は現在、北海道最大の結社である。