おひつじ座
新しい性を
「持ちたい」と「なりたい」
今週のおひつじ座は、「性的であるとはどういうことか?」について改めて自分なりに考えていくような星回り。あるいは、すべてが未解決で、常にプロセスの最中にありながら、それでも他の何ものかと共振していこうとすること。
近代家族において強固に上書きされてきた異性愛秩序においては、母を「持ちたい」と欲望し、父に「なりたい」と欲望した者が異性愛の男になり、逆に父を「持ちたい」と欲望し、母に「なりたい」と欲望した者が異性愛の女になってきた。
つまり、「持ちたい」欲望と「なりたい」欲望とを使い分け、それぞれ異性の親と同性の親に対する割り当てに成功した者だけが、‟正常”に成長した大人とされてきたんです。
そこでは「大人になる」なり方が、異性愛の‟男”ないし‟女”になるなり方のいずれかしかないことが「運命」として与えられてきた訳で、そうした用意されたシナリオ通りの成長が起きない場合(たとえば同性愛者)は、逸脱や異常や失敗や病理として見なされてきました。
しかし、「なりたい」欲望(自身の性的主体化)と「持ちたい」欲望(対象の性的客体化)とは、そもそもそんなに簡単に分離できるものではないのではないか、という議論はこれまでも一部の識者の間では繰り返し唱えられてきました。
つまり、「あの人みたいになりたい」という思いと「あの人を自分のものにしたい」という思いはしばしば重なり、それが現代社会では、ますます性的に‟男”でもあり‟女”でもあるようなグレーな領域のアイデンティティとなって結実していくはず。
もし今あなたが、女性としての(男性としての)自分のことを「逸脱や異常や失敗や病理」といったカテゴリーと少しでも重ねているのならば、今週はそうした押しつけられたカテゴリーを相対化し、「生きづらさ」を減らす気付きを得ていく上で絶好のタイミングとなっていくでしょう。
十字路になるということ
メキシコ系アメリカ人として、「borderland」すなわちメキシコ国境地帯に生まれた詩人アンサルドゥーアには次のような詩を遺してくれましたが、この詩は今週のおひつじ座にふさわしいメッセージと言えるかもしれません。
「きみが境界線を生きるとき
人々はきみの中を通過していく 風がきみの声を奪う
きみは雌ロバ 去勢牛 犠牲の山羊(スケープゴート)
新しい人種を告げる者
半分と半分―女であり男でありいずれでもない―
新しい性
ボーダーラインで生きのびるためには
きみは境界なく生きなくてはならない
十字路になりなさい」
(グロリア・アンサルドゥーア、『ボーダーランズ/ラ・フロンテーラ』)
今週のキーワード
混血児のアイデンティティ