おひつじ座
満たされるために手を伸ばす
「東京」は怖い?
今週のおひつじ座は「この秋の草の香よ東京に満つ」(トオイダイスケ)という句のごとし。あるいは、深い深い快楽へ、それでも手を伸ばしていこうとするような星回り。
ここでは「東京」は草の香りの充満を際立たせる、解放感のある広がりとして象徴化されていますが、その一方で東京というのはとても怖いところでもあります。
電車に乗っているだけで、あれもこれも欲しいでしょう? と絶え間なく訴えかけてくる街で生きていると、最初こそ「知らんがな」と思っていても、次第にその返答がくぐもり、ぼやけていって、いつの間にかすっかり取り込まれてしまう。
まるで自分というものが溶けてなくなってしまうかのように。
けれど、例えば『東京を生きる』を書いた雨宮まみさんは、あえてそうした欲望の連鎖に乗っていく。そうすることが雨宮さんなりの「東京」の生き方なのでしょう。
彼女はこう言い切ります。
「ほんとうに満たされることを、もしかしたら自分は知らないのかもしれない、知らないからこんなに求めてしまうのかもしれない、と不安になる」
でも不安になりつつも、自分の知らない深淵が、そこにあるのだということに確かな喜びを感じていたのだと思います。
鈍感になっているわけじゃなくて、自覚したうえで欲望して、ちゃんと東京で生きている人がいるんだな、ということは今週のおひつじ座にとってひとつの指針となっていくでしょう。
自然なリズムに任せて
詩人の加島詳造が現代語に訳し直した老子の一説に、次のような一節があります。
「美しいと汚いは、別々にあるんじゃあない。美しいものは、汚いものがあるから美しいと呼ばれるんだ。善悪だってそうさ。善は、悪があるから、善と呼ばれるんだ。悪のおかげで、善があるってわけさ。」
これはまさに雨宮まみさんの生きた「東京」のことではないでしょうか。
「だから、道の働きにつながる人は、知ったかぶって手軽くきめつけたりしない。ものの中にある自然のリズムに任せて、手出しをしない。すべてのものは生まれでて、千変万化して動いてゆくんだからね。」(加島詳造、『タオ 老子』)
8日にいて座に木星が入り、本当に必要なものを手に入れていくための1年が始まっていくおひつじ座にとって、今週は満たされるために手を伸ばしていく最初の週となっていくでしょう。
今週のキーワード
『東京を生きる』