おひつじ座
私が私であるために
行間を豊かに
今週のおひつじ座の星回りは、閉じられた書物から開かれたテキストへと変じていくよう。あるいは、時代とか社会とか常識とか、大きなものに巻き込まれる中で取りこぼされがちな、小さな事実や物語を拾い上げていくこと。
もし今週あなたに何か伝えたいことがあるとすれば、それは「本音を雑に扱わないように」という言葉に尽きるでしょう。
もし「真実はひとつ」となどと安易に言い切ってドヤ顔をしていられる人がいたらある意味で最高なのですが、とは言え「言いたいこと」と「言ってること」のギャップを、常時適切に埋めていける人というのもほとんどいないはず。
特に現実が疲弊し荒んでくると、どうしても口をついて出る「言ってること」が「言いたいこと」まで縛り付けて、そのまま世界をぐるぐる巻きにして叩きつけたいような気持ちになってくる。
つまり、胸中に沈んでいる一片の真実や本音というものを無理やりありきたりな理屈や常識の枠内に押し込んで、見ないフリを決め込むうちに、本来その人に開かれていた可能性までもをみずから閉じてしまうのです。
真実はいつも「言ってること」の行間にあり、それはテキストの外にある実際の行動や声の出し方や視線との結びつきの中にある。
おひつじ座の人は、今こそそういう感覚を研ぎ澄まし、みずから実行していってほしいと思います。
「私」という呪文
「現世のなにものも、われわれから「私」と口に出していう力を取り上げることはできない」
と、シモーヌ・ヴェイユは『重力と恩寵』のなかで書いていましたが、実際にはしばしば私たちは「私」と口に出すことを忘れてしまうものです。
そうして、ふとした偶然がたまたま重なって、それらが自分から大事な一部を奪い去っていくとき、その痛みによって初めて、私たちはやっとのことで「私」とかすかにつぶやく。
いわば、不条理と痛苦は「私」という呪文を唱えるためには欠かすことのできない条件であり、そうであればこそ、自身の抱える不条理と痛苦をより深く、より豊かな行間において認識していく必要に迫られていく。
今週のおひつじ座の星回りは、そんな私以前のものが私になっていくために打たれる、ささやかだけれど決定的な芝居のワンシーンのようです。
今週のキーワード
「小さな物語」と「大きな物語」