おひつじ座
新たなる風景の出現
補助線を引いていく
今週のおひつじ座は、「門を出て一笑すれば大江横たわる」。すなわち、自分とこの世界との新しい関係を発見していくような星回り。
冒頭の引用文はある唐詩の最後の一行ですが、そこには近代人的なこぢんまりした、自然感覚には見られない大国人たる自然の風情があります。
詩でも俳句でも、おびただしい数の新しい作品が今なお作られている訳ですが、畢竟それもみな新しい「関係」を発見していこうという試みに過ぎないのだと言えます。
ただ、そうした発見は「一笑」のような補助線が人の手によって引かれることで初めて見出されて成功していくのであって、ただ座して待っているだけではいつまで経っても生まれてはこないでしょう。
世間から向けられる悪口や批判など丸ごと飲み込んで平然としているような、堂々たる大河という風景を引き出すのにも、そこにまなざしを向けさせる補助線が必要なのであり、今週のあなたのテーマも、自分の何気ない日常の中に、新しい風景を生み出すための補助線を引いていくことにあるのだと言えます。
マラルメにおける美の原理
19世紀後半のフランスの詩人マラルメは、こんなことを言っています。
「ものはすでに存在しているから、われわれはものを創造する必要はない。だからわれわれはものの関係だけをつかむ必要があるだけだ。それで詩もオーケストラもみなものの関係がつくり出す子供である」
と。
モノとモノとの新しい関係とは、今まで結びつけられてこなかったもの同士が結合するということ。
それは例えば2つの相反するものの結合だったり、遠くかけ離れたものを連結することで、そうした結びつきこそ、マラルメにとってすぐれた美の原理であると考えられていた訳です。
例えば、門前払いをくらった後に「門を出て」、そこで俯いてしまったり、黙って立ち去っていれば、それはごく普通の結びつきであり、新しい風景は立ち上がってこなかったでしょう。
そうせずに、あえて「一笑」したからこそ自然とまなざしがデザインされ、これまで誰にも見えていなかったものが見えるようになったのです。
今週はそんな風に詩をつくるようにして、自分と世界との新しい関係をデザインされてみてはいかがでしょうか。
今週のキーワード
まなざしのデザイン