おひつじ座
圧倒的であること
ぬめりびかり
今週のおひつじ座は、「胎盤のぬめりびかりの仔馬かな」(岡田一実)という句のごとし。あるいは、突如、自分の中から答えが飛び出してくるような星回り。
胎盤と仔馬をつなぐ「ぬめりびかり」の語によって、馬のお産のシーンがなんだかとてつもない凄みをもって頭の中に浮かんでくるような一句です。
あまりに凄みがありすぎて、この作者はきっと実際に馬のお産を見たのではなくて、馬のお産くらい生々しい体験をしてしまったために、なんとかこの句を詠んで自分を落ち着けたのではないか、と思うほど。
おとめ座での新月から始まる今週は、おひつじ座のとって、そんなふうに何の前触れもなく言葉やビジョンがあなたの中からポーンと飛び出してくることがあるかもしれません。
もしそういう事態に直面した際には、人に説明するのに都合のいい理由だとか、もっともらしい背景だとか、そういうものは後回しにしていきましょう。
乗馬したまま颯爽と断崖絶壁を飛び越えた若き日のアレクサンダー大王のように、いまは、圧倒的な見切り発車で事態を押し切っていくくらいの勢いが欲しいところです。
過剰なる余剰
自然に存在するものを人が忠実に表現しようとするとき、そこには必ず過剰なまでの余剰部分が生じます。
例えば、「丸い」ということを表すためには、円周率の小数点以下に永遠に割り切れないまま数を羅列させ続けねばなりません(有理数ではなく無理数になる)。
それは人間の中に巣食う自己中心的で破壊的な、無明へと閉じていこうとする流れへの抵抗であり、そうした抵抗によってなんとか確保された余剰部分こそが、進化や創造をもたらしていく訳です。
これがもし円周率を“3”で表現してしまったら、世界はその美しさを半減させ、人々の想像力は急速に退化するでしょう。
自らをまだまだ予測不可能で、創造の過程にあるものにしていきたいなら、円周率が割り切れない数字を打ち続けるように、過剰なまでに余剰部分を作り込むことです。
今週何か伝えることがあるとするなら、ただただその一点に尽きるでしょう。
今週のキーワード
アレクサンダー大王