おとめ座
視線の反転
目を通して私を紡ぐ
今週のおとめ座は、「右の眼に大河左の眼に騎兵」(西東三鬼)という句のごとし。あるいは、異なる要素や側面を結び付けていくなかで、新たな自分を紡ぎ出していくような星回り。
自句自解には
「多摩川の土堤で作った。土堤の右を川が流れ、左を騎兵の列が来た。私だけが動かず、川も騎兵も流れていった」
とある。
右目と左目が別々のものを映し、それが立体的に組み合わさったとき、同時にそれを編集している<わたし>というものが否が応でも立ちあがってくる感覚。
それは裏を返せば、<わたし>が新たな私らしさを通して自覚されることを欲して、それに見合った必要な材料を両眼で探し当てていくということでもあります。
今週はそうした外部の光景を通して、自分を見つめ、紡ぎなおしていくことになるでしょう。
目の逆説
地動説(太陽中心説)を証明した天文学者・ケプラーは、
「私たちの眼球は外界のイメージを網膜において倒立したかたちで結像している」
という重大な発見をした、知覚理論における先駆者でもありました。
つまり、私たちは普段、必ず交叉・倒立する像の交わりを通じて、何かを見ている、ということです。しかも、そのことに私たち自身も気づいていない。
これは応用して言えば、目に映る現実や行為は逆さまにひっくり返してみることで、より本来のありように近い状態を見通すことができる、ということでもあります。
たとえば、心の奥底にある願望を見るためには、自己分析などいくら重ねてもあまり意味はないんです。むしろ、外側からやってきて自然と出会うものを観察していくとき、自己の深部というのははじめて開示されるんです。
言い方を変えれば、私たちが何かを「見ている」と思う場合、まず「見させられている」要因を考えていくとき、真実に近くなるという訳です。
こうして交叉・倒立が繰り返されていくことで、私たちの“見通し”は中心点へと近づき、それが<わたし>を再構築していくきっかけとなっていく。そんなことを、今週は頭の隅に置きつつ過ごしてみてください。
今週のおとめ座へのキーワード
「見ている」と「見させられている」