おとめ座
夢見の思い出
永遠なるものたちへ
今週のおとめ座は、「月のゆめを見しおもひ出や焚く落葉」(飯田蛇笏)という句のごとし。あるいは、自分の中から決して損なわれることのない美しさを目撃すること。
この句は大正10年に「落葉」の季語とともに詠まれた句ですが、いま読んでもまったく古さを感じさせませんね。
落葉が人の手によってかき集められ、火と煙とともに天にのぼってゆく光景に、思わず「この世の現実とは何なのだろうか?」ということをめぐる夢想がかき立てられます。
煙と同じように、この世の現実も吹けば飛ぶような夢や幻のようなもの。
死んで魂が帰っていく霊的故郷としてのお月様は、そういう意味ではそうした夢や幻の一切が取り払われた真実の世界と言えるかも知れません。
それはこの現実世界では「おもひ出」であり、日々の雑務や忙しさの中でつい忘れがちなことではあるけれど、そこには一切の嘘がない。
今週のおとめ座も、喪われてしまったものだからこそもう決して損なわれることがない、というこの感覚の尊さをきっと噛みしめていくことができるでしょう。
一粒の種子
蛇笏(だこつ)のような俳人も含め、芸術家というのはごく若い頃につくった作品の中に、後年の作品の芽が端的に現れていることが多いのです。
それは一粒の種子が人生全体を包むような核心を成しているように、人の本質はそうそう変わることがないということを、我々に教えてくれるよい例でしょう。
特に子どもというのは、小さいがゆえに経験より想像力に頼るため、その時期に「何を作りだし、何を垣間見たのか」が、良くも悪くも深くその人の本質を形成してしまうのです。
今週はそうした自分という存在の中心にある一粒の種子を、今いちど思い出していくこと。そうすることで、人生において自分が何を大切にしているかを、改めて認識していくことができるはず。
今週のキーワード
霊的故郷