おとめ座
怠けるが勝ち
不安の根源
今週のおとめ座は、「才能がある子」の緩和ケアのごとし。あるいは、自身の「官僚性」をいくらか解きほぐしていこうとするような星回り。
幼児虐待に関する研究で知られる心理学者アリス・ミラーは、愛情があるかのように偽装されていても実際には愛情が欠如しており、子どもが無条件には決して受け入れられずに、何らかの(大抵は親にとって都合の)「よいこと」をしたときにだけ、「生存キップ」が渡されるような家庭に「才能のある子」が出現するのだ、という事実を明らかにしました。
こうした「才能のある子」は、世間的には平均以上の成功をおさめていても、つねに不安にさらされていたり、虚しさに苦しめられていることが多いのですが、その点について学際的な研究で知られる安冨渉は、東大や京大をはじめとしたエリート大学出身者たちというのは、その大抵が「重症の才能のある子」である」と喝破しつつ、特に「官僚的」と呼ばれるような人たちを取りあげて次のように指摘しています。
すなわち、一見すると確実性の探求のように見える彼らの仕事ぶりや話し方というのは、端的に言って「「叱られない」ためのものであって、手続き的厳密性・整合性・隠蔽性に傾斜して」おり、「おそらくは「神」からもとやかく言われないため」の、不安の裏返しに過ぎない、と(『合理的な神秘主義―生きるための思想史―』)。
そうして安富は、ミラーの「才能のある子」という概念との出会いを通して、「「自分に対する裏切り」を引き起こすコミュニケーション過程の全体を「魂の植民地化」と捉え、そこから離脱する方向を探し求めるようになった」のだそう。
その意味で、7月28日におとめ座から数えて「探求」を意味する9番目のおうし座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、魂の脱・植民地化をはかっていくことがテーマとなっていきそうです。
ナマケモノの適応進化
ナマケモノがなぜ怠け者に見えるかと言えば、まず動き自体が鈍いこと、そして木にぶら下がって一日20時間も眠っているから。ただ、その代わりに一日にわずか10gの葉っぱを食べるだけでよく、糞尿も1週間に1回程度ですんでしまうため、考えようによっては人間と比べて格段に省エネで地球にやさしい生き物という風にも言えます。
興味深いのは、このナマケモノの近縁種に、かつてオオナマケモノという動物がいたこと。とはいえ、ナマケモノより怠けているからそう名付けられた訳ではなく、彼らは地上で活動し、食欲も旺盛、成長すれば体長6メートルにもなったと推定されているのだそう(ナマケモノの体長は約50~60cm)。
このオオナマケモノはどう考えてもナマケモノよりも積極的に生き、周辺の環境においてもより強大な存在であったように思えるのですが、しかしオオナマケモノの方は進化の中で絶滅してしまい、生き残ったのは木の上で「怠けていた」ナマケモノの方だったというのですから、なんとも興味深い話です。
今週のおとめ座もまた、このタイミングで改めて「より優秀、より強大」といった方向性の見直しをはかっていくとよいでしょう。
おとめ座の今週のキーワード
重症の才能のある子