おとめ座
境地を深める
「年を取る」と「年寄る」
今週のおとめ座は、『木曽路行ていざとしよらん秋ひとり』(与謝蕪村)という句のごとし。あるいは、孤独で豊かな作業に打ち込んでいこうとするような星回り。
前書きには「故人に別る」とあります。故人というのは作者の親しい友人のことであり、その友人が世を去ったというのです。
人間はいずれ皆ひとりでこの世から去っていかなければなりません。秋という季節は、そうした孤独感をより引き立ててくれますが、そこで出てくる「いざとしよらん」というのは、松尾芭蕉の「この秋のなんで年寄る雲に鳥」という俳句から取ったもの。
私たちは普通、誰もが平等に年を取ると思っています。しかし芭蕉は「年を寄る」という。これは自分に年を寄るようにさせるということであり、いわゆる人生の体験とか芸術の境地を深めていくことに他なりません。
作者は友人との別れに接して、もっと自分に与えられた人生の限られた時間、このひと時をひとり味わって、しっかり深めようと決意しているのでしょう。
15日に自分自身の星座であるおとめ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、ただ年を取るのでなく、みずからの内的な渇きに時の方を寄らせていくべし。
「もう一人の自分」を育てるということ
人生で本当に辛いとき、苦しいとき、危機にある時、最後の最後で自分を救ってくれるのは「もう一人の自分」に他なりません。
そうした「もう一人の自分」は視線を感じるだけの場合もあれば、具体的な言葉をかけてくることもあり、そればかりはもう個人差と言わざるを得ないのですが、ここで大切なのは、そうした「もう一人の自分」というのは、やはり「無駄な努力」だとか「酔狂な遊び」に独りきりで興じている時間の中でこそすくすく育っていくらしいということ。
逆に、徹底的に「無駄な努力」を省いて人生設計を合理化したり、「酔狂な遊び」を一切やめて“健全”になろうとすれば、次第に「もう一人の自分」はお化けのようになっていき、逆に自分の足を引っ張るようになるはず。そのあたりの付き合い方という点でも、やはり芭蕉や蕪村らは抜群でした。
彼らほどまでとはいかずとも、今週のおとめ座もまた、年を寄らせるような独りきりの時間を貪欲に過ごしていきたいところです。
おとめ座の今週のキーワード
二人の自分を生きる