おとめ座
タッグを組んで生きていく
「再定住」ということ
今週のおとめ座は、「私はコンコードの町を広く旅した」と言ったソロー、ないしその引用者のごとし。あるいは、大地の夢にみずからも接続していこうとするような星回り。
ともに詩人であり、それぞれ屋久島とシエラネバダの山中に暮らしていた山尾三省とゲーリー・スナイダーは、ひとつの場所に住み、周囲の環境と一体化していくという視点からみずからを再教育していく生き方を「再定住」と呼び、その中で植物、土壌、動物、あるいは気候などに関する正確な知識を獲得しつつ、生態系に対する人間の責任を確認することの重要性について、次のように語っています。
スナイダー そこに自分の場所を見つけないと、心理的にそこにはいないんですね。そこかよそにいるんです。それはまた、自分とはいったい何者かという定義にも関わってくる。ですから、これはとても精神的な問題ですね(…)。
山尾 僕の言葉で言うならば、ひとつの場所が持っている豊かさというものは自分の一生を捧げつくしても探しきれないものだと思うんです。自分の一生や二生を捧げても探しきれない。
スナイダー(…)たとえばソローは、「私はコンコードの町を広く旅した」と言っているんです。つまりコンコードは小さな町だけれど、ソローはひじょうに大きくとらえて、そこを何度も何度も旅してきた、ということなんだね。
山尾 つまりソローはその場所を深く、どこまでもよく知ろうとしたということですね。
スナイダー そうです。彼が言いたかったことはまた、そこは面積の上では小さいけれど、彼はその場所を充分にそして深く知ろうとしたというこなんだね。
山尾 それがディープ・エコロジーですね。また、場の哲学というものです。(『聖なる地球のつどいかな』)
山尾はこうした意味での「場」をめぐって、「大地が人知れず見ている夢がある」という言い方でも表現しているのですが、6月4日におとめ座から数えて「生の基盤」を意味する4番目のいて座の満月に向け月が膨らんでいく今週のあなたもまた、自分が現に生きているその「場所」を、できるだけ深く掘り下げてみるといいでしょう。
地衣類の生存戦略
地衣類は既知のものだけでも1万5千種以上もあり、それらは自立した生物学的存在ではなく、2種の異なる植物から成っています。ひとつは自ら光合成で食べ物を作る小さな海藻の類で、もうひとつは他の有機体に依存して生きる菌類。
このふたつが一緒になって、どちらの類とも外見上も生物史の上でも異なる第三の生物として、いずれも単独では生存できないような過酷な環境(灼熱の砂漠や山頂の残雪、真空状態など)に適応しているのです。
まさに奇跡のような驚くべき存在であり、特に藻類の方は単独でも生きられ、今でもそうしているものもいるということを考えると一見不可解な話ですが、菌類と一緒にいることで藻類の方も乾燥や損傷や電磁波や放射線などの脅威を免れることができるという恩恵を受け取っていることも事実で、やはりこの強力なタッグなしには地衣類は自然界で現在のような多様な展開をすることはできなかったでしょう。そして、彼らの関係は先の人間と土地との関係にも相通じているところがあるはず。
今週のおとめ座の人たちにとってもまた、自分で自分の食い扶持を稼ぐだけに留まらない彼らのような在り方は、大いに参考になっていくはず。
おとめ座の今週のキーワード
生存のみを目的にしないこと