おとめ座
踊り方を思い出す
一頭の春の馬
今週のおとめ座は、『歩みつつ歩幅を探す春の馬』(林亮)という句のごとし。あるいは、人としての初々しさを取り戻していくような星回り。
「春の馬」は、春になって野に放たれ、のびやかに遊ぶ馬のこと。冬のあいだは厩舎や小屋に閉じこめられていた馬が、暖かな陽ざしを浴びながら、一歩一歩たしかめるように歩いていく。その姿が、「歩幅を探す」という言い回しに表われており、他の季節には見られない初々しさが感じられます。
学生時代や新入社員の頃までは、春を迎えるごとにあんなにも初々しくいられた人間も、年をとるごとにそうした世界が新鮮に輝いているような感覚を失っていくどころか、変化や転身そのものを怖がるようになって、現状維持や保身にしがみつくようになっていくのですから、なんとも皮肉なものです。
しかし、本来季節とともに刻々と移り変わっていく自然のように、人間もまた時機に応じて、その姿かたちや歩み方を変えていくほうが、ずっと無理がなく、したがって生気に満ちて、しあわせに過ごしていられるはず。
その意味で、7日に自分自身の星座であるおとめ座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、何かを受けとめるにしろ、どこかへ歩みだすにしろ、1頭の春の馬になったつもりでやってみるといいでしょう。
‟踊らされる”のではなく
『ダンシングホームレス』というドキュメンタリー映画をご存知でしょうか。ビッグイシュー販売者をはじめとする路上生活経験者をメンバーに活動するダンス集団「新人Hソケリッサ!」の踊りや日常が主題となっているのですが、彼らは自分たちを「ヒーローでも、いい人でもない」のだと言います。ただおのれの肉体を使って純粋に生と対話することの重要さをひしひしと感じており、それが彼らの踊りにも自然と出ているのかも知れません。
虚飾ばかりが先行する世の中で、多くの人は街中や交通機関の至るところで発される広告メッセージを通じ欲望に“踊らされる”ことにすっかり馴れてしまっているように見えますが、生命というのはそんなに簡単なものではない。少なくとも彼らの踊りを見ていると、そう思わせる何かがあるのです。
監督の三浦さんは、同作品を紹介したビッグイシューの記事の中で「同じ時代を生きる1人の人間としてメンバーを描きたかった。彼らの人生が踊りに表れていますし、それが撮影期間中にも変化していくのがわかりました」と語っていました。
今週のおとめ座もまた、どうしたら切実になれるか。いつの間にか失われた生の主権を取り戻すことができるか、ということを改めて自身に問うてみるといいでしょう。
おとめ座の今週のキーワード
初々しさが大切なの