おとめ座
特異な役割を演じる
ホッファーの実践
今週のおとめ座は、はみ出し者として真面目に働いたエリック・ホッファーのごとし。あるいは、みずからの人生を輝かしいものにするための気づきをみずから掴んでいこうとするような星回り。
10代で天涯孤独となり、放浪しながら職を転々としつつ、40歳でやっと港湾労働者として定職につきながら、大学で講義するまでの社会哲学者となったエリック・ホッファーは、やりがいだとか自己実現を仕事には求めませんでした。働いた後に、自分がやりたいことをやる。ワークライフバランスなんて言葉がもてはやされる何十年も前から彼はそう考え、みずから実践していたのです。
労働は彼にとって生活を営むための手段であると同時に、そこで出逢った人びとや経験を通して、自身の思索を深くするための糧ともなりました。そして一緒に働く仲間の働きぶりや愛すべき人間性を観察するなかで、社会不適応者の弱者にこそ特異な役割があることに気づくのです。
弱者に固有の自己嫌悪は、通常の生存競争よりもはるかに強いエネルギーを放出する。明らかに、弱者の中に生じる激しさは、彼らに、いわば特別な適応を見出させる。弱者が演じる特異な役割こそが、人類に独自性を与えているのだ。(『エリック・ホッファー自伝』)
そういう仲間に囲まれながら、既存の価値観や社会に適応できなかった自身もまた、ひとりの弱者として真面目に働き、労働と読書と思索によって独自の社会哲学を築き上げたホッファーのように。8月5日におとめ座から数えて「サバイバル」を意味する3番目のさそり座で上弦の月(行動の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、自分がどんな役割に徹していくべきか再確認していくべし。
「動的平衡」としての弱者の労働
この宇宙は原則として、あらゆるものがエントロピーが増大する方向にしか動きません。つまり、秩序あるものは混乱し、集まったエネルギーは分散していく定めにあるのです。
ただ、そうしたエントロピー増大の法則に対して、絶え間ない‟抵抗”を行っているのが生命であり、人間の身体であり、そのひとつひとつの細胞なのだそう。
つまり、先の法則にしたがって作られた細胞はやがて壊れていきますが、自然に壊れるのに先回りして自分を壊し、その不安定さを利用して新しい細胞を作り出す活動をしているのです。
生物学者の福岡伸一さんは、こうした絶え間なくすべての細胞を入れ替え続けることで「生きて」いることを可能にしている細胞レベルの抵抗を、生命の「動的平衡」と呼んでいますが、はみ出し者でありながらどうにか働き生きていくということそれ自体も、この宇宙法則が社会的レベルにおいて適応された結果生じてくる必然的事態なのかもしれません。
今週のおとめ座は、社会全体の予定調和へいかに抵抗し、崩すかという視点から、みずからのするべきことを思い定めていくべし。
おとめ座の今週のキーワード
弱者が演じる特異な役割こそが、人類に独自性を与えている