おとめ座
自分で自分を癒していくということ
病みを育てる
今週のおとめ座は、おもしろい箱庭つくり。すなわち、個人的な病みをこえて、文化の病い、時代の病いを引き受けていこうとするような星回り。
河合隼雄は、病いがある人が箱庭をつくると強いインパクトを受けたり、それが変化していく様子を見ると、素人でもその展開の意外さに気付く一方で、普通に暮らしている人が箱庭にそれらしく自分の世界を構築したものは、見事なまでにおもしろくないのだそうです。言い方を変えれば、健常者というのは逸脱のないようにものを置く才能がある訳です。
逆に、病いを持っている人の中にも、非常におもしろいのと、まあまあおもしろいのと、そこまでいかずに中途半端に終わってしまっているのと、色々とレベルがある。病んでいればそのままいい作品が作れる訳ではなくて、それを表現するだけの力もきちんと持ち合わせていないと、疲れとか恐ろしさだけがダーッと出るばかりになってしまう。要するに病んでいるだけでなく、健常でもなければいい箱庭=作品はできないんですね。
河合はさらにそれにプラスして、箱庭に深い物語が生まれるときというのは、その人が個人的に病みつつも、個人的な病いをちょっと超えるということが起こるのだとも言っています。つまり、時代の病いとか文化の病いというものを引き受けることで初めて、その人の表現は普遍性を持ってくるのだということです。
その意味で、5月1日におとめ座から数えて「探求」を意味する9番目のおうし座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、異常と健常のバランスをとるだけでなく、そこでいかに世界観を深められるかという問題に直面していくことになるでしょう。
自己を規定しなおす
ここで言っている「病む」とは、たとえば風邪をひいた時なんかを想定してみると分かりやすいかも知れません。頭はボーっとして、効率性や生産性は著しく落ち、なんだか世界の蚊帳の外に置かれてしまった気分になる。お医者さんは、発熱は体に入ったウイルスを免疫が撃退している証拠なのだと言いますが、これは一体どういうことなのでしょうか?
しかし、ここではっきりしたことは、個体の行動様式、いわば精神的「自己」を支配している脳が、もうひとつの「自己」を規定する免疫系によって、いともやすやすと「非自己」として排除されてしまうことである。つまり、身体的に「自己」を規定しているのは免疫系であって、脳ではないのである。脳は免疫系を拒絶できないが、免疫系は脳を異物として拒絶したのである。(多田富雄、『免疫の意味論』)
脳みそはしょせん身体の一部に過ぎません。蝕まれたり、変更を余儀なくされたり、たえず「免疫というスーパーシステム」の中で調整され、変化しながらそこにある。その一方で免疫というのは、自分のごく一部分を整えたり組み立て直したりしているだけでなく、新しい部分や要素そのものを創り出しながら自己組織化していくのだそうです。
つまり、自分ではないものを通して、たえず新しい自分を創り続けているのが免疫なのでであり、その意味で今週のおとめ座は、できるだけ脳みそを休ませて、免疫の働きに身を任せ、促していくことがテーマなのだとも言えそうです。
おとめ座の今週のキーワード
風邪をひくと自分がわかる/かわる