おとめ座
影に向かって跳ぶ
光が強ければ影もまた濃くなる
今週のおとめ座は、『花影(かえい)婆娑(ばさ)と踏むべくありぬ峙(そわ)の月』(原石鼎)という句のごとし。あるいは、事実に体当たりしていこうとするような星回り。
険しい山道を歩いていると、空には月が出ている。そこに突き出ている桜の枝は、月の光をうけてその影を道へ落としている。「婆娑と」とは、その影がゆらりと揺れ動くさまを形容した語で、ここで作者はそれをただ客観的に説明するところを飛び越えていくのです。
すなわち、この道を歩いて行くとその花の影を踏んで通らねばならぬ。よろしい、面白い、われは進んでその花影を踏んでやろうじゃないか、と。ここでは明らかに、花影になにか作者の心のわだかまりであったり、いつもどこか頭の隅にかかって離れない悩み事が投影されており、作者はそれを避けて通るのではなく、むしろ正面きって直面してみようとしているのかも知れません。それくらい、この影は濃く、深い。そして、逆説的に空に浮かぶ月は煌々と冴えわたっていたのでしょう。
同様に、17日におとめ座から数えて「自己価値」を意味する2番目のてんびん座で満月を迎えたところから始まっていく今週のあなたもまた、相手や物事の表面的な解釈を書き換えようとする代わりに、いつかは直面しなければならない事実にみずから近づいていくべし。
野蛮は忘れた頃にやって来る
ひとりの人間の中には、経験や教育を通して洗練され磨き上げられた文明・文化的側面と、生まれたてのまま半ば放置されてきた野蛮な側面とが様々なレベルで絡みあい、対立しあいながら、なんとか共存しています。
そして当然、互いの側面がその都度おのずから抱く欲求や衝動を満たそうとしていく訳ですが、そのうちのどのあたりに自己の焦点を置いてバランスをとっていけるかで、本人のレジリエンス(精神的回復力)の在りようが大きく変わっていくのです。
そういう前提に立つならば、今のおとめ座はさながら波にのったサーファーのように、重心の切り替えどころに直面しているのだと言えるでしょう。そしてそれは、みずからを破壊しかねないものと恐れていた不安や無秩序を取り込み、慣れ親しんでいく大きな契機なのだとも言えます。
その意味で、今週のおとめ座は「こわさ」を感じる場面や状況と直面したなら、できる限り目をそらさずに向き合って、みずから踏み込んでみるべし。
おとめ座の今週のキーワード
レジリエンスの向上