おとめ座
半ば付き合い、半ば突き放す
労働と賃金を切り離す
今週のおとめ座は、柳壮悦の「東洋的解決」という言葉のごとし。あるいは、自分も含めた労働者の生活のために金銭を贈ったり贈られたりしていくような星回り。
美術評論家で民芸運動の父として知られる柳壮悦は、かつて日本の芸術家は「どれほどの値で買ってくれと主張したことがない。(…)店の方では、こんな謙虚深い作家のものは、なるべく有利に作者に酬いるようにすべきだと考え、店の利益を出来るだけ少なくして、作家たちに酬いる。それで価格は双方の権利の主張の妥協点できまるのではなく、双方の無欲と感謝との接点できまる」と書いていました。
現代の自由主義経済において一般的な、高く売りたい作り手と、安く買いたい店が妥協するという「西洋での解決」とは異なるものとして、柳はそれを「東洋的解決」と呼び、後者の方が「もっと互の幸福を約束する」というのです。
ただ、これは理屈の上では理解できても、いざ実行しようとすると現代人の多くは強い抵抗を感じるはずです。というのも、資本主義社会では労働と賃金は固く結びつけられており、労働者は自分を商品として資本家に売っていると錯覚するので、次第に人間としての尊厳をひどく傷つけられてしまうのです。
その意味で、2月1日におとめ座から数えて「働くこと」を意味する6番目のみずがめ座で新月を迎えていく今週のあなた自身もまた、まずは収入を得て生計を立てることと、人のために働くことを別個のことして切り離してみるといいでしょう。
既存の文脈を利用する
政治学者の丸山眞男は『日本政治思想史研究』(1952年)において、明治の初めに日本が西洋と対等になろうとしたのは、西洋に同化するためではなく、西洋から自分をよりよく守るための手段を見出すためだったということについて言及しましたが、こうした明治維新への洞察はどこか今週のおとめ座のテーマと通底するところがあるように思います。
文化人類学者のレヴィ=ストロースは、日本はヨーロッパと太平洋の架け橋の役割を果たし、ヨーロッパと対極的な歴史を発展させてきたと考え、19世紀に起きた日本の動きを18世紀フランスの動きと比較して、日本の歴史を「月の裏側」に例え、丸山をそうした歴史に取り組む学者の一人に挙げました。
これはギリシャ、ローマ以来のヨーロッパの歴史を「月の表側」とした時、それは歴史の半面でしかなく、日本やアメリカなどの歴史の動きをその内側から洞察していくのでなければ、真の歴史理解には繋がらないという彼の考えの現れでもありました。
同様に今週のおとめ座もまた、まさに太平洋戦争のただなかで明治維新の本質を看破した丸山のごとく、自分が身を置く社会やコミュニティの文脈に半ば付き合い、半ば突き放して利用していく姿勢が求められていきそうです。
おとめ座の今週のキーワード
資本主義社会に同化するためでなく、そこから自分をよりよく守るため