おとめ座
むすんでひらいて
開いた系
今週のおとめ座は、新宿御苑の樹のごとし。あるいは、「延長の自由」を謳歌していこうとするような星回り。
新宿御苑をぶらぶらと歩いてみると、葉を茂らせている樹木というのは、ただ目の前に見えているこんもりとした輪郭にとどまっている訳ではなく、目に見える以上にたいそう巨大な空間をあたりに占めていて、そこでエネルギーを発揮しているということが分かってきます。
同様に、私たち人間もまた皮膚の内側に閉じられた存在として考えない方がいいでしょう。
体表はたんに目に見える輪郭に過ぎず、私たちの体にひそむエネルギーはいつもどこかにはみ出しており、その意味で幼児が自分の体がどこにもでも移動できるという幻想は幻想ではなく、むしろ「延長の自由」というリアルなのだと言えるかもしれません。
富永太郎はそのことを「私は透明な秋の薄暮の中に墜ちる」と表現していましたが、19日におとめ座から数えて「アイデンティティの拡張」を意味する9番目のおうし座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、いつも以上に自分自身を閉じた系としてではなく、開いた系として実感していきやすいはず。
「大人になる」とは?
ふつう人は自分の人生が破綻することを不幸なことだと思っていますが、人生を中長期的に捉えることができたとき、不幸と真実はコインの裏表のようなものだということに気が付いていきます。
というより、生が破れて、職業や名誉や家庭や財産など、何かしら喪失していった時にはじめて、この世のほんとうの姿を垣間見、そこで人間とは何かということを少しだけ悟るのです。
ただし、せっかく人間に生まれながら、人間とは何かということを知らずに、人生を終えてしまう人間が世の九割である、といっても言い過ぎではないでしょう。そういう小利口な人間になることを、日本人はいつから「大人になる」こととイコールで考えるようになってしまいました。
小利口をやめるには、幼い子供にならうのが一番ですが、先に言及した「延長の自由」とは、まさに生の破れの許容と表裏の関係にあるのだとも言えるでしょう。
同様に今週のおとめ座もまた、喪失を経験していくとき、そこから本当の意味で人生は始まっていくのだということを改めて心に刻んでいくべし。
おとめ座の今週のキーワード
結わったりほつれたりする自由