おとめ座
風に敏感になる
こちらは8月16日週の占いです。8月23日週の占いは諸事情により公開を遅らせていただきます。申し訳ございません。
読むということ
今週のおとめ座は、「秋たつや何におどろく陰陽師」(与謝蕪村)という句のごとし。あるいは、ちょっとした予兆から大きな物語を紡いでいこうとするような星回り。
「陰陽師」は、むかし陰陽寮という政府機関があって、そこで天文とか占いとかを司っていた役人のことですが、その役人が秋がたって風が変わり、驚いたというのです。
平安時代に編まれた勅撰和歌集『古今和歌集』の中に藤原敏行の歌でよく知られているものがあります。「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞ驚かれぬる」。これは風の音で秋が来たと知る。目にはよく分からないけれど、季節の推移に何か異変を感得した、まさにその瞬間を捉えている訳ですが、掲句の場合は、またそれとも驚き方が違っています。
陰陽師が驚いたというのは、ただ夏が終わり秋という季節になっただけではなく、ここには何か政界の動きとか、世の中の怪しい雲行きがあるということで驚いている。風に敏感になるというのも、ただ物理的な意味だけでなく、いろいろな意味がある訳ですが、ここでは風向きや風の音から、これから起きることの予兆を読み取り、占っているのです。
16日におとめ座から数えて「受信と発信」を意味する3番目の星座であるさそり座で上弦の月を迎えていくあなたもまた、自分が何に対して驚いているのかを自分なりの仕方で誰かに伝えていくことになるでしょう。
清明と戻橋
陰陽師といえば、後世の陰陽師たちから陰陽道の神として祀られた安倍晴明が有名ですが、彼については面白い話があります。
陰陽師が呪術をかけるときに使う神霊ないし鬼である式神を、清明の奥方がとても怖がってしまったために、仕方なく使わない時は京都の一条戻橋のたもとに十二の式神を封じ込めておいたというのです。
この戻橋というのは、『源平盛衰記』でも平家没落の託宣が下された有名な場所で、代々天皇や貴族の栄枯盛衰が占われてきた場所でもあったそうですから、清明なんかも式神を使って戻橋で占いをしていたし、ひいては掲句の「陰陽道」たちもそうしていたのではないでしょうか。
戻橋というのは、鬼が徘徊したり、封じ込められている空間、すなわち他界との境界だったのであり、占いというのも、必ずそうした非日常空間で行われていたのです。同様に、今週のおとめ座も、驚くのにふさわしい自分なりの場所に足を向けてみるといいでしょう。
おとめ座の今週のキーワード
占いは驚きを伴うもの