おとめ座
芸は身を助く
あわいの豊かさ
今週のおとめ座は、「冬旅や足あたゝむる馬の首」(誐々)という句のごとし。あるいは、自分を大切にするための創意工夫に時間を割いていくような星回り。
元禄(1688~1704)の無名作家の俳句を柴田宵曲が編纂した『古句を観る』から抜粋した一句。句意としては、馬上の旅を続けている人が、足のつめたさに耐えられなくって、馬の首に触れてあたたまった、ということだそう。
冬場の冷たい風に向かって馬を駆るのは、想像絶する厳しさだったことと思いますが、掲句はただ馬上旅行のつらさを訴えている訳ではなくて、足で触れた馬の首のあたたかさをなまなましく感じ、それから旅人としてのおのれの侘しさがしみじみと実感されてくるというのがこの句の味わい深いところ。
つまり、作者の意識は他者のところへ向けられているのではなく、あくまで自分自身に集中しているのです。無理をしている自分にきちんと対処してそれをゆるめ、そのありがたさの裏で、もしこうであったならもっとよかったな、とさらなる欲求の芽生えに気付く。
その意味では、自分を大切にするとは、つらさや悲しさをただなくしていくことではなくて、欲求と満足のあいだの微妙なあわいを豊かにしていくということなのかも知れません。
22日におとめ座から数えて「セルフケア」を意味する6番目のみずがめ座の始まりで木星と土星の大会合が起きていく今のあなたもまた、そうした豊かさをこれまでより一段深く切り開いていくことがテーマとなっていきそうです。
ギーガーの場合
例えば『エイリアン』の造形をデザインしたH・R・ギーガーは、独特の世界観をもつカルトスターとなりましたが、その創作の秘密について、ドキュメンタリー映像のなかで「自分の夢に出てきたものを描いている」と述べていました。それがプロモーション用の設定であれ真実であれ、いずれにせよ彼が隠遁生活の中で次々と作品を生み出していったことは確かです。
また実際にギーガーの絵を見た人の多くは、おそらくそこに強い性衝動の抑圧を感じる事と思いますが、彼は実際10代の頃に初めてキスをしたことで、しばらくの間絶え間ない性的興奮に襲われ、起きている間中頭の中をエロティシズムが占めていた時期があったと語っており、その体験が創作に与えた影響も大きかったようです。
今週のおとめ座もまた、そんなギーガーのように、じっくり自分へ寄り添い向き合っていく時間の中で、研ぎ澄まされ、育まれるものの力を再認識していくことでしょう。
今週のキーワード
空即是色