おとめ座
花と乙女、そして泥
眩しく光るもの
今週のおとめ座は、「おそるべき君等の乳房夏来(きた)る」(西東三鬼)という句のごとし。あるいは、溢れ出てくる生命力にしみじみ感じ入っていくような星回り。
戦後すぐの昭和23年(1948)の作。男性である作者が、衣替えが終わった若い女性たちの姿に圧倒されてしまった心の内を、そっくりそのまま詠んだ句。
まだ「敗戦」を受け止めきれず、戦争を引きずっている人の多かった戦後の混迷期において、男性よりもむしろ女性たちの方がたくましく溌溂としているという現実を率直な感動とともに句にできたのは、作者が女性との付き合いが多く、また大変なフェミニストであったということも大きく関係しているかも知れません。
ここに描かれているのは、白いブラウスを身にまとい、明るい日差しのさす街を颯爽と闊歩していく若い働く女性たちであり、その胸を眩しそうに眺めている冴えない中年男性の姿もまた言外に置かれているように感じられます。
昭和の女性像というと、どうしても割烹着をきて料理や家の掃除にいそしみ家族を裏で支える慎ましげな姿がイメージが描かれがちですが、本来女性の生命力というのは、そんなに甘いものでも、大人しいだけのものでも決してないのです。
週明け早々の5月11日におとめ座から数えて「生命力の発露」を意味する5番目のやぎ座で、土星の逆行(常識の反転)が起きていく今週のあなたもまた、世間や周囲の押し付ける常識やバイアスを打ち破るがごとく自身のエネルギーを解放させていくことがテーマとなっていくでしょう。
「汚泥」に咲く蓮華
仏教において“涅槃の境地”を象徴する神聖な花とされる蓮華は、汚泥の中から伸びて美しい花を咲かせることでも知られています。
では、この「汚泥」とは何のことか。
それは、日常生活で生じる煩悩であり、人間関係において必ず生じてくる葛藤のこと。
仏典の翻訳者として知られる鳩摩羅什(くまらじゅう)は、「たとえば臭泥の中に蓮華を生ずるがごとし。ただ蓮華を採りて臭泥をとることなかれ」と弟子たちに言っていたと伝えられていますが、これは周囲や社会にはびこる不正や間違いをどうしてもそのままスルーすることができず、過剰に気にしたり批判の目を向けるために何かと消耗してしまいがちなおとめ座にとって、とても重要なテーマでもあります。
今週は自分の中の「汚泥」を見つめ、そこからどんな花を咲かせていくのかということを実感を持って予感していくことになるかも知れません。そしてそれは、冒頭の句を詠んだ作者が少なからず感じていたことでもあったのではないでしょうか。
今週のキーワード
煩悩即菩提(煩悩はやがては悟りの縁となる)