おとめ座
流動体としての猫
月並を破る
今週のおとめ座は、「春雨や障子を破る猫の顔」(十丈)という句のごとし。あるいは、これまでの静寂を破って近付きつつある気配と真正面から向き合っていくような星回り。
掲句は元禄時代のあまり有名でない俳人の、あまり有名でない句。そしておそらく、猫を飼ったことがある人なら、かつての時代なら誰もが経験したであろう実景だろう。
障子の破れた部分から猫がただ入ってくるのであれば平凡だが、猫が貼られて間もない真新しい紙を破ってぬっと顔を出してくる姿にはどこか面白みがある。
春雨に降りこめられてつれづれなる日ならば、いつもなら思いつくことさえない破れかぶれに少なからず身を任せてみたくなるというもの。
それに、季節はすでにもう空気が生暖かくなりつつある早春。少しくらい障子に穴をあけられたとしても、冬の季節ほど困ることもないはず。
3月3日におとめ座から数えて「予定調和的な帰結」を意味する10番目のサインであるふたご座で上弦の月(行動の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、月並みな反応や結論をいかに破っていけるかが問われていくに違いない。
家に風が吹き抜ける
占星術では「風」と言えば、他者とのコミュニケーションや世間からの干渉など、さまざまなレベルでの関わりあいを連想するが、今週のおとめ座はそれに加えてさらに未来へと吹き抜けていくような潮流や、可能性の気配をも感じさせる。
蛇が衣を脱ぐように、私たちも人と人との間をすり抜けながら、さまざまな人たちとの関わりを通じて、自分の未来を仰いでいく。
いまはただ、そうして変わりゆく身のまわりの文脈がどこへ繋がっていくのかを、余計な感傷をまじえず、なんとなく見つめていくくらいのつもりで丁度いいだろう。
ちょうど、猫という生き物が次に何をするか予測不可能なように。
今週のキーワード
カオスの風