おとめ座
転倒と再誕
大胆な変容に向けて
今週のおとめ座は、大岡信の「さわる」という詩のごとし。あるいは、ありのままの自分自身であるために、自身を生まれ変わらせようとしていくような星回り。
「さわる。
木目の汁にさわる。
女のはるかな曲線にさわる。
ビルディングの砂に住む乾きにさわる。
色情的な音楽ののどもとにさわる。
さわる。
さわることは見ることか おとこよ。」
否。視聴覚メディアの発達した現代において「さわる」ことは通常、あまり重要とはされないておらず、あくまでそれらの感覚の“ついで”に行われる動作とされることがほとんどです(それゆえに、触覚は“隠れて”使用されがちでもある)。
ところが、この詩ではあえて通常の意味での触覚の対象ではないような、さまざまな対象に「さわる」という言葉を使用していくことで、既存の感覚的常識を異化し、「さわる」という感覚を第一義に近い位置へと転倒させていこうとしている訳です。
なお、詩の最後に「おとこよ」とあるのは、細い指を持つ人は触覚においてより敏感であるという発表もされているように(「the Journal of Neuroscience」,2009年)、一般的に女性は男性よりも指が細く、触覚に優れているという前提を踏まえれば、この詩の意図する転倒が男性優位に作られた社会や文脈まで睨んだものであるということが分かってきます。
13日(月)から14日(火)にかけて、おとめ座から数えて「輝きたいという欲求」を意味する5番目のやぎ座で太陽と土星と冥王星が正確に邂逅していく今週のあなたもまた、どれだけ窮屈な文脈や状況を自分なりに脱却していくことができるかが問われていくでしょう。
計画された死の先で
例えば人体が新陳代謝していく際に、不要となった細胞があらかじめプログラムされた細胞死を起こして除去されていくことを「アポトーシス」と言いますが、今のあなたは言わばそうしたアポトーシス的なプロセスの最中にあるのだとも言えます。
人間以外では蝶が変態していく場合にも、唾液腺などの幼虫器官が、成虫を形づくるための養分となっていくのだそうで、アポトーシスがしばしば感覚の異化や転倒を伴なうことも珍しくないようです。
生物が本能的に恐れているのは、いつまでも変化せずに現状が固定され続けてしまうこと。そういう意味では、あらかじめ意図し、計画された死を潜り抜けていくこともまた、必要な生存戦略なのであり、それこそが今のあなたに必要なものだと言えるでしょう。
今週のキーワード
起死回生をこそ狙っていくこと