おとめ座
飢餓と充溢
自覚の契機として
今週のおとめ座は、「毛糸選(え)る欲しき赤とはどれも違う」(山下知津子)という句のごとし。あるいは、今後、自分に本当に必要としていくものが何なのか、改めて探っていこうとするような星回り。
店に行って、毛糸を選んでいる。さまざまな種類の赤い色の毛糸があるのだが、自分の欲しい赤とはどれも違っている。句の大意としてはそんなところですが、言外に激しい感情が書き留められている句でもあるように感じられます。
それは今すでに手の中にあるものに満足できない、激しい飢えの感情であり、世界との違和に由来する絶望感とも言えるかも知れません。
けれど、人は本当に自分が欲しているものを知るためには、必ずどこかで絶望を経験しなければないというのも、残酷ではあるけれど世の真実でしょう。何かが「あって当たり前」であると感じているということは、それ自体がすでに「もしそれがなくなっても構わない」という意思の表現でもあるように。
「それがなくては、どうしても困るのだ」と、あなたが心から感じられるものは何でしょうか。
28日(月)におとめ座から数えて「感情の復活」を意味する3番目のさそり座で新月を迎えていく今週は、そんな心の奥底での実感を確かめていくことがテーマとなっていきそうです。
全体の一部として在るという感覚
人間は、一人ひとりが独立した個である以前に、より大きな全体の一部としてあることで初めて、存在し続けていくことができます。ただ、それは閉じて自分を守ることに慣れてしまった人にとっては、とても恐ろしいことのように映ります。
自分を開いたら、大事なものを傷つけられ、価値を奪われ、草をむしるように花を摘まれ、そのへんにポイ捨てされるのではないか、と体をトゲのようにこわばらせては、花開くことを拒絶する。
それもまた人間の現実です。ですが、今週のおとめ座は、そうした人間中心の世界から一歩外へ出て、「花咲かす一本の樹木」となったつもりで過ごしてみるといいかも知れません。
例えば、何かの拍子で地上近くの枝が折られ、花がダメになったとしても、桜の樹そのものの価値が減ることはありません。
花は樹上のいたるところで咲き、その花のどれもが自分であり、また花粉を運ぶ虫たちや、花を愛でに集まる人間たちの中にも、花は存在し、やはりそれら全体が自分でもある。そして、そういうことに自覚的であるとき、溢れてくるものがある。
「感情の復活」というのは、そういうことでもあるように思うのです。
今週のキーワード
良縁もまた口に苦し