おとめ座
考えの禊ぎ
慣習を脱ぎ捨てる
今週のおとめ座は、「をりとりてはらりとおもきすすきかな」(飯田蛇笏)という句のごとし。あるいは、慣習を1枚、はらりと脱ぎ落していくような星回り。
すぐに気づくと思いますが、掲句はすべてひらがなで書かれています。しかし、普段から作者がそういう作風の人という訳ではありません。
句意としては、一本の芒を折り取ってみると、軽そうに見えた芒が意外にも重みをもって手にそれが伝わっててきた、といったところでしょうか。
仮にこれを漢字混じりで表記してみると、「折り取りてはらりと重き芒かな」となって、大分印象が変わりますね。しなやかな掲句と比べて、どこかごつごつしています。
おそらく作者は、体験した「一本の芒」の在り様、思った以上に豊かに広がってきたそのすすきの感触にみずからの表現を近づけようとした結果、当たり前に使っていた漢字を排することで、縦書きの句を一本のすすきの穂に見立てていったのでしょう。
今週は、これまで当たり前に踏襲してきた慣習を思いきって捨ててみることで、かえって「浮かぶ瀬」が際立っていくような、そんなブレイクスルーを試みていきたいところ。
一本の葦として
パスカルは
「人間は一本の葦であり、自然のうちでもっとも弱いものにすぎない。しかし、それは考える葦である」
と言ったそうですが、実際のところ、考えるだけでは何の解決にもならないし、かえってこじれるだけな気もします。
知らぬ間に、親を複製するような人生になってやしないか。植えつけられた他者の意志に振り回され過ぎているのではないだろうか、など。
いったんそんな疑念を心に抱いてしまった人は、いつかはそれを自らの手で振り切っていくための「禊ぎ」を経験していかねばなりません。
親も子も同じ人間な訳で、同じようにこの地球上に生える一本の葦や、すすきのようなものであると、心の底から腑に落ちるまで。
今週は、いったん独りになってとことん考える時間も必要でしょう。そうして気が済んだら、人といかに交わっていくかということに、改めて真剣に向き合っていくことになりそうです。
今週のキーワード
表現を感触に近づける