おうし座
自分への苛酷さ
雨と花びら
今週のおうし座は、「紅枝垂雨にまかせて紅流す」(鍵和田釉子)という句のごとし。あるいは、わが身に染みついた言葉をいったん洗い流していくような星回り。
「紅枝垂(べにしだれ)」とは桜の園芸種で、枝が長く伸びて柳のように垂れているので、それだけで豪勢なのですが、さらに花色が濃い紅色でじつに艶やかな桜として知られています。しかもそこに、柔らかい春の雨が次から次へと降り注いでは、花びらがすべり落ちてくる。なんとも絢爛たる光景だ。
花からすれば、春の嵐は迷惑かもしれませんが、惜しみなく花びらを雨に流してこそ、そこに自然と文化の見事な融合の業(わざ)が光ってくるというもの。
古来より、雨から降りきたる雨粒のひとつひとつは、先人が遺した言葉の象徴として喩えられてきましたが、それはあなたにとっては親や恩師、またはかつての恋人や友人の言葉であったりする場合もあるはず。
彼らの言葉が雨粒となってあなたの手の内にある成果や、苦労して獲得した言葉をどこかへ押し流していくのです。そこには喪失感もあるかもしれません。けれどうまくいけば、それを上回って余りある恵みや豊かさを受けとっていくことができるでしょう。
自分を殺さず追放するということ
「生きること――それは、死に絶えようとする何ものかを、わが身から絶えず追放することを意味する。生きること――それは、わが身の中の、またわが身に限らず、脆弱で古くなった一切に対して、容赦なく苛酷であることである。
生きるとはしたがって――死に逝く者、衰弱した者、歳を重ねた者への畏敬の念をもたないころではないだろうか?常に殺害者であるということではないか。――しかしながら、老いたるモーゼは言ったものだ。「汝殺すなかれ!」と。」(『喜ばしき知恵』、村井則夫訳)
今週のおうし座へのキーワード
言葉のシャワー