おうし座
赤子的抜け感を
遊船は動かず
今週のおうし座は、『ちらばりてまだ遊船に乗らぬなり』(高浜虚子)という句のごとし。あるいは、なんとなく続いてきた「だるい日常」に抜け感をもたらしていくような星回り。
「遊船」は納涼のために出された舟のことで、この句は乗船前のワンシーンを描いているのでしょう。乗船予定の参加者たちがまだ思い思いのところに点在しており、「ちらばりて」という冒頭の措辞からして、すき間のおおい疎らな自由さや、閑散とした涼やかさを効果的に演出している。
さらには「乗らぬなり」という結びも、出発への差し迫った緊張感だったり、はやるような期待感の膨らみを絶妙に逸らすことで、何事も起きない“抜けた感じ”を増幅しています。
そして、ある種のインスピレーション(決定的な気付き)というのは、往々にして実際に苦しさや楽しさの最中にあるときだったり、クライマックスに向かってグングン状況が進展していくときではなく、そうした分かりやすい場面と場面のあいだの何気ない「間」においてこそ降ってわいてくるものだったりします。
それはこれまで「当り前」だと思っていた世界に生じたズレや亀裂を察知した虫の知らせであるかも知れないし、あるいは、変わり映えしない日常の連続の<外>へと突き抜けていくための突破口となる可能性だってあるでしょう。
7月21日におうし座から数えて「非日常的断絶」を意味する9番目のやぎ座で満月を形成していく今週のあなたもまた、いつも以上に何気ない「間」や何事にも占められていない「余白」を意識して過ごしてみるといいでしょう。
ありふれた神秘体験
神秘体験が神秘たりえるのは、一方でそれを「神秘」として排除してしまえる強固で理性的な現実世界があるからですが、現代ではそうした「現実」や「社会」そのものがゆらいでいる上に、昨今の都知事選などを見ていても、ますますそれらの輪郭は曖昧になっているどころか、すでに破れが生じているように思えます。
いずれにせよ、時代は「現実」がさらに大きくゆらぐ方向に向かっていくでしょう。そこではもはや「神秘体験」は奇跡でも不思議でもなくなり、むしろ「現実」が現実であることの方が奇跡的であると感じるように、感性や身体性もまた変化していくのではないでしょうか。
時代の変化というのは、いつだって言葉が追いついてくる以前の、身体的反応のレベルで起こっているのであって、少なくとも「時代を生き抜く知恵」とか「サバイバル術」といったものも、そこから組み立て直していくべきでしょう。
その意味で今週のおうし座もまた、大脳的な知の領域でこねくり回してしまうのではなく、身体性のレベルで時代のゆらぎに適応していくことがテーマとなっていくでしょう。
おうし座の今週のキーワード
時代の最前線としての身体反応