おうし座
来し方行く末の再確認
脱皮後の蛇
今週のおうし座は、『脱ぎたての酸つぱき匂ひ蛇の衣』(西山ゆりこ)という句のごとし。あるいは、この1年の変容期間を振り返った上で、静かに自身を讃えていくような星回り。
「蛇の衣(きぬ)」は夏の季語で、この季節に蛇はもっとも活動的になって数回脱皮し、その度にからだも大きくなっていく。しかし、蛇の抜け殻はあちらこちらで見つかっても、実際に蛇が脱皮する様子そのものは誰も見たことがなかったりするから不思議だ。
作者もおそらくはそうなのであって、掲句では残された痕跡を嗅覚的に述べた結果、「脱ぎたての酸っぱき匂い」となったのだ。この匂いは、蛇にとって脱皮という行為が全身全霊のエネルギーを極限まで使い切った先にあるものであることを暗に示しており、さながらマラソンを走り切ったあとのランニングウェアのようでもある。作者はここで、脱皮や変容のさ中にあっては気付かない生命の成長や奮闘ぶりを、静かに讃えているのかも知れない。
同様に、占星術的にはおうし座に「拡大と発展」の木星が滞在していたこの1年あまりのあいだ、おうし座の人たちはある種の「脱皮」を行ってきたのであり、まさに脱皮した後の蛇の運命を生きているのだと言える。
その意味で、6月6日におうし座から数えて「生きがい」を意味する2番目のふたご座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、この1年を通してすっかり様変わりした現実や、自分自身を踏まえた上で、改めて自身が今後辿っていくであろう運命を予見していくことになるだろう。
「ヴァニタスのある自画像」
若い男性が右手に絵を描くときに用いる画杖という道具を手にする一方で、左手を絵にかけている。その男性はオランダの画家ダーフィット・バイリーの自画像なのですが、自画像を描いたとき、すでにバイリーは67歳でした。
すなわち、自画像のなかの若い男性は、自身の約40年前の姿であり、さらに男性が左手で支えている小さな楕円形の画面には、10年ほど前に描いた自画像がはめられています。つまり、ここには若いころの自分と、すこし前の自分の姿が描かれており、それらを描いた現在のバイリーの姿はありません。
「ヴァニタス」とははラテン語で「空虚」「むなしさ」を意味する言葉であり、中世以来の「メメント・モリ(死を想え)」という主題と同じく、寓意的な静物画のジャンルの一つとして盛んに描かれました。
実際、バイリーの自画像においても、若い男性が腰かけているテーブルの上には、髑髏とともに宝飾類やコイン、消えた蝋燭、花、楽器、ひっくり返った杯などが、所せましと並べられ、さらには空中に大小のシャボン玉が数個浮かんでいます。はかなく消えるシャボン玉の脇で、若い男性は自身もやがて老いて死にゆくことを悟り、やがて自身の元にも訪れるであろう定めを予見しているのです。
今週のおうし座もまた、木星の公転周期である12年前よりもより深く、そうした定めと向き合っていくことになるでしょう。
おうし座の今週のキーワード
定められた運命の予見